第5話
私は、ここにきて
「もしかして――、もしかして、貴方は、わた――僕を見ているのが
「そんな事は……いや……、貴女に
「何だか……。その……ごめんなさい」
「
彼は、そう言うと
「私は、私は……。『アーサー様』が意識をなくした後、かなり
「それは、当然でしょう? 意識がなかった主人が目を
「そうじゃないんです……」
カミールは、首を横に
「契約の話は、しましたよね」
「う、うん」
「人と《人形》の契約は、絶対なんです。一度、結んだ契約が、勝手に解除される事なんてありません。そんな事が起こるのは、片方が死んだ時だけです。ですから……、ですから、私は、中身が、もしかしたら、別人かもしれないと――、別人かもしれないと分かっていながら、それでも、安心してしまったんです……。
「人って……、人って、意外と
「それは、私が、人だったとしても、同じように悩んだという事でしょうか?」
「だと思う」
私は、静かに
私は、なんて無神経だったのだろう。
魔法に夢中になって、はしゃいでいた。大切な人を失ったばかりの彼らの気持ちに気付きもしないで……。彼らは、私の姿に『アーサー』を重ねて見てしまっていたのだ。それは、複雑な気持ちだっただろう。
私は、自分が恥ずかしくなった。
同時に
彼らは、私を見てはくれていなかった。当たり前といえば、当たり前だ。私は、彼ではないのだから――。
そして、いつしか、私はここに居るべきではないとさえ思うようになっていた。
*
私はその日、自室で何をするでもなく、ボーっとしていた。心ここにあらずだ。
そんな時、いつぞやの
私は、窓を開けてみる。
――そうだ。私も出て行こう。
今、思えば、おかしな考えであったが、ここにいるべきではない
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