第4話 VS骸骨武者
空間に響き渡る甲高い金属音。
幾重にも白刃が躍る、剣閃の舞い。薄暗い部屋に火花が飛び散る。
鎧の隙間を縫う刺突を穿てば、横っ面から刀身を弾かれて流された。
肉薄した所に掌底で顎を打とうとしたが、スウェーで避けられてこちらも不発に終わり、攻防が切り替わる。
半歩後退して剣の間合いを作った骸骨武者の振り下ろし。
横へと回避したところに、すかさず横薙ぎ。
その流麗な剣捌きに感嘆を覚えながら鍔で受け止め、同時に自分から後ろに跳んだ。
オレの身体能力も大分上がったが、それでも骸骨武者の膂力には遠く及ばない。
バカ正直に受け止めるわけにはいかなかった。
即座に距離を詰めた所に振るわれる横薙ぎを、姿勢を落として回避する。
立て続けに振るわれた連撃をひたすら弾きつつ、タイミングを見計らい、大きく打ち払うことで態勢を崩す。
生じた微かな隙間。
利き足を軸に半回転しながら、その勢いを乗せた一刀を振り抜く。
首元を狙い澄ました剣閃だったが、カンという甲高い音と共に軌道を変えた。
変えられた。
強い、と。素直に思う。
二十合、三十合と剣戟を結んだところで互いに有効打には至らないが、掠り傷は蓄積している。
当然不利なのは血肉で動くオレの方だ。
頬に、肩に、腕に、脚に。切り傷から一筋の血雫が流れ落ちる。
しかし。
「――――」
剣戟を重ねるたびに思考が研ぎ澄まされていく。
刹那の攻防に垣間見える生と死の極致が極上の糧となり、凄まじい勢いで剣術が上達していくのが分かった。
速く、鋭く。
刃が打ち合うたびに跳ね上がる剣速が、次第に骸骨武者を圧倒していく。
だが、やはり決定打には至らない。
打開策を考えながら刀を振るうオレの脳裏に、ある考えが過ぎった。
まあ、試し価値はあるか。
不意に、骸骨武者が距離を取った。
ここに来てのパターンの変化。
警戒度を跳ね上げて意識を防御寄りに傾ける。
骸骨武者は左の手の平に火球を生み出した。
突き出した左手から火球が射出される。
速い。二百キロはあるだろう。
試しに回避をしながらそっと火球に刀を振るう。
すると火球は真っ二つに分かれて霧散した。
なるほど。斬れるわけか。
よし、尚のことイメージが固まった。
オレは左右に揺さぶりを掛けながら疾走する。
構えた刀を睥睨し、濃く、強く、より克明に、研ぎ澄ませた集中力を一つのイメージに叩き付ける。
すると刃に煌々と燃え盛る烈火が宿った。
思い返すのは、黒歴史ノートに記載されていた技の一つだ。
もしかすると、アレはただの妄想を書き出したんじゃなく――。
鎧武者の刺突に合わせて跳躍。
くるりと中空で態勢を整えながら狙いを定める。
「――取った!」
落下の勢いを乗せた烈火の一撃は、骸骨武者の首を断ち切り、その身体を焼き付くした。
「あーー……つーかーれーたーー……」
多大な達成感を噛みしめながら腰を落とす。
かなり歯応えのある敵だった。
見る見る自分の実力が上がるのが分かったし、かなり楽しかった。
が、それはそれ。これはこれ。
メタクソに疲れた。
あまり動く気になれず虚空をボーっと眺めていると、来た側とは反対方向にあった二枚扉が開いた。
「…………行くか」
仕方なく重たい身体に鞭を打ち、立ち上がる。
また骸骨武者がリポップしたら堪らないしな。
さすがに二度目は勘弁だ。
トボトボと疲れた身体を引きずりながら歩を進める。
どうか出口でありますように。
どうか出口でありますように。
「――――」
その先にあったのは、地下へと続く階段だった。
…………ッスゥー。
ゴミカスゥゥウうううううーーーーッ!!!。
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