第5話 手紙
もし、私が死んでしまったら、あの子はどう思うだろう。
ちゃんと悲しんでくれるかな?
冒険者である以上、常に死を覚悟しておかないといけない。
でもここ1年で私は気が緩んじゃったみたい。
「あぁ、なんか、大切な物、できちゃったなぁ…」
私は今日、この時のためにあのノートを遺しておいた。
視界が徐々に暗くなっていく。
そうか、本当に私、死んじゃうんだ。
どうして大切なものに気づいた時に命が尽きるかな…
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まず、私の研究について、私の研究の成果は全部シーズ君のものにしてほしい。
何故か君からは才能のにおいがするからね。いつか有名になったとき、私の研究の成果を自分のモノとして発表して褒められてほしい。そうすれば君が幸せな姿を見て私も幸せになれるし、私の研究が認められてまた幸せ、一石二鳥とはこのことだね。
特に渦輪魔法は君との相性もいいし、私の最高傑作でもあるから頻繁に使って、「シーズが作った」ってアピールしてほしい。
研究の詳しいことについてはノートの後ろのほうのページにまとめてあるよ。
次に君に託したいもの。
君には私の夢を託そうと思っている。
覇王になること、生徒会長になること、幸せになること。
この3つを叶えてくれればそれでいいよ。
そして最後、愛について。
いつか言ったと思うけど、愛の定義は人によって変わる。だからこれはあくまで私個人の意見としてとらえてほしい。
愛って言うのは「幸せを願う心」だと思う。
好きな人に不幸なことがあったら本気で悲しい気持ちになる。それは愛があるから。
「敵への愛が足りない」と一度言ったことがあるよね。
それは、「敵の過去や気持ちを考えてモンスターを倒してほしい」っていう意味を込めていたんだ。
その辺の野良モンスターにも家族がいて、帰る家があるかもしれない。
本当は戦いたくないのかもしれない。
本当は痛くて仕方が無いのかもしれない。
私はそれを考えたうえで、苦しまないようできるだけ一発で脳天を射抜くようにしている。
そして、心の中でいいから、そのモンスターに優しい言葉をかけてあげる。
抽象的な表現で理解ができなかったかもしれないけど、結局愛って言うのは、優しさに近いものなんだ。
私が書きたいことは一通り書いたから、君に贈る言葉は次で最後にするよ。
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『私はシーズ君を愛しています。』
「マリゼル・ハートフェルトより…」
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