第4話 紙の翼を持った夢
「聞いてください!!俺、王都の騎士団に卒業した後、条件付きで入団できることになりました!!」
珍しくセードがはしゃいでいる。
「すごいじゃん!!私でもまだ決まってないんだけど!!」
「ふぇー!!進路決まるの早いな!!すげえ!!」
「ちなみに、セード君の言っているその“条件”って何?」
「あぁっと、それに関しては国家機密だから他の人に言ってはいけないそうなんです。」
「なぁんだ~まあいいけど…」
進路か…
嫌な単語だ。考えたくもない。
でもきっと僕はこの町のギルドの冒険者として働くことになるのだろう。
「シーズ君の夢は何?」
僕が学校のベンチで考えている時、先輩がやってきた。
「僕の夢ですか…僕の夢は…あれ?」
「じゃあ、今の目標は?」
「それは……この学校で悔いを残さず卒業する…こと?」
「なるほどね、私の夢は、今年の覇王決定戦で優勝して覇王になること!!」
先輩は高らかにそう宣言する。
先輩の姿は今、最高に輝いていた。
しかし、先輩の夢がかなうことは、無かった。
「先日、ポイズンドラゴンのクエストをこなしていたマリゼル・ハートフェルトさんが、亡くなられました。」
それは先輩が夢を宣言してから2か月後、覇王決定戦の前日の出来事だった。
「え…?」
「そんな…」
「マリゼルさんはポイズンドラゴンを倒した後放出される毒ガスを吸い込んでしまい、教会で治療を施しましたが、残念ながら…」
僕は生まれて初めて泣き崩れたかもしれない。
今まで優しくしてくれた先輩が…
自分に戦い方を教えてくれた先輩が…
好きだった先輩が…
一番幸せになってほしかった先輩が…
命の恩人が…
「マリゼルさんからの遺言を預かってます。『シーズ君……」
——————
『私の教室の机の下のノートを読んで』
——————
僕はすぐに3年2組に行き、先輩の名前が書かれた机を探して、ノートを開いた。
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シーズ君へ
君がこれを読んでいるということは、私はもうこの世にいないということだね。そんなときのためにここに私の研究と君に託したいこと、そして…
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『“愛とは何か”を記しておいた。』
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