第3話 愛とは

「お、今のいいよ!!そうそう!走りながら矢を射って命中させられるようにしよう!!」


「【ショット】!!」


「うん!!だいぶ安定したね!!」


 よし!!


「セード!!やれ!!」


「言われなくても!!錬金魔法〈フルメタル・ソード〉!!」


「はい!!残念!!リーチは私のほうがあるよ!!」


__スパァン!!


 あの学年トップのセードがこうもあっさりと…


 マリ先輩のもとで部活を始めてから早3カ月…


 1学期は終わり、夏休みに入っていた。


「シーズ君、私の考えた魔法どう?運よく君と私の習得した魔法はどっちも“疾風魔法”だから使えると思うんだけど…」


「この魔法すごいですね!!僕の矢の命中率上がりましたよ!!」


 先輩の疾風魔法の応用技“渦輪魔法”


 リング状の空気の渦を作るだけの魔法は、矢にとっての“線路”の役割を果たすだけでなく、小さく圧縮して人に撃てば、かなり大きなダメージになる。


「気に入ってもらえてよかったよ。あ、セード君!!お疲れ様!!いい動きだったけどね~!!」


 なんだろう、心がもやもやする…




「マリ先輩、どうすればもっと強くなれますか?」


「そうだな~しいて言えば…戦う相手に対する“愛”が足りないね。」


 愛?


 愛って何だろう…


 単語はよく聞くが、意味はよく分かっていない。


 しかも相手に対する愛?


 敵に愛は不要だろう…


「先輩、愛って何ですか?」


「さあね、愛は人によって定義が変わっちゃうからね~。人に教わるモノではないかな~…自分で愛について考えてみな!私も愛についてはよく知らなくてね…私も考えることにするよ。」


 愛…愛…愛…




 やがて1年が経った。


 僕とセードは2年生に、先輩は3年生になった。


「結局、副会長止まりだったな~…でも、君たち2人が生徒会に入ってくれてうれしいよ!!」


「まあ、成績が上がるので…」


「僕は、まあ、学校生活に悔いを残したくないなと思って…」


 僕は生徒会副会長になり、セードは頭がいいから会計になった。


 先輩は2年連続で副会長である。


 1年経った今もまだ“愛が何なのか”を知ることができていない。


「?……シーズ君、なんだか、複雑な表情してるね。どうしたの?」


「いや、未だに愛が何なのかが分からなくて…」


「愛?愛…あ、あれずっと真剣に考えてたの!?」


「ん?」


「いやあ、すっかり忘れてるものかと…」


 なんだ、そんなに重いものではなさそうだ…


 少し考えすぎだったか…

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