第2話 断れない勧誘

「ねえ、武器と魔法の研究、やってみない?」


 いきなり何を言うのだろうこの人は…


「えっと…」


「魔導機械研究部!!入らない?」


 目の前には以前僕とセードをドラゴンから守ってくれた人がいた。


 どうやら同じ学校だったらしい。


 命の恩人の頼みを断るわけにはいかないが…


「集まりとかはいつに…」


「今日の放課後!!」


「あ…今日は…」


「俺は全然いいですよ。」


 こいつ…成績がいいからって…


「お、いいね!!君、確かセード君だね?で、もう一人は1年2組の学級委員長のシーズセン君だ!!」


「し、シーズでいいですよ…」


「じゃあシーズ君、私の部活に入らない?」


「えっと、僕は今度の期末の対策を…」


「……じゃあ、戦い方を教えてあげる!!あと、良い魔導機械を貸してあげよう!!」


「入部します。」


 命の恩人に戦い方を教えてもらえる機会なんてなかなか無いだろう。




「私は2年2組マリゼル・ハートフェルト、長いから“マリ”って呼んでくれると嬉しいかな。君たちの事はよく知っているよ。」


「何で知ってるんですか?」


「一応私、生徒会副会長だからね!次の生徒会選挙で当選した後は会長を狙ってるよ!!」


 何と言うかこの人…


「それで今日は、何を教えてくれるんですか?それがメインだったじゃないですか。」


「まあ、待ってよ、セード君。こういうのは慣れ合うことも大切だよ。」


 明るいな…


 結局、戦術講座は1時間後ぐらいから始まった。


「冒険者の戦い方は人それぞれ、違う。まずは私に攻撃してみてよ。それで君たちに合っている戦術を伝授しよう。」


「いや、でも、女性に攻撃なんて…」


「別にいいよ。どうせ当たらないし。」


 ムカッ…


「分かりました。怪我しても知りませんよ?」


「大丈夫、教会があるから。」


「シーズ、お前は遠方から狙撃、俺は近距離戦で潰す。」


「おうよ。」


「さあ、どうぞ!!」


「「覚悟!!」」




 瞬殺…


 圧倒的敗北…


「こんなの聞いてませんよ!!」


「そうだ!!」


 いや、まさか遠距離近距離の両立型だなんて思わないじゃん…


「パラディン(聖騎士)にアーチャーか。ちなみに私の職業は“アトラトルユーザー(投槍器使い)”だよ。」


「アトラトルは遠距離の武器では…?」


「よくしなる槍があるからね。」


 チートかよ…


「シーズ君は遠距離特化だね。もう少し戦える距離の幅を広げようか。セード君は近距離特化だけど、中距離でも戦えるようにしよう。とにかく、入部おめでとう!!」


 僕たちの夏が、今始まった。

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