決着 7-5

俺がもし、橘凜の立場なら許していないだろう。

 それに俺から見れば三人は田中君に言われ仕方なく謝罪しているように見える。

 自分の意思ではなく人に言われたから。

 そんなことを思案していると橘凜が口を開く。


「米沢君を殴ったよね」

「「え」」


 三人は聞き取れなかったのか頭を傾け橘凜の言葉を待った。


「椅子を蹴られた事も、教科書をダメにされたことも対した事じゃない、今後やめてもらえば済むから。私が許せないのは米沢君を殴ったこと、それに対して謝ってないこと。米沢君に謝って!!」


 そこまで一気に捲し立てるように言い三人を睨む。

 それを見ていた田中君はもちろんクラス全体が驚きの表情を浮かべていた。


 俺自身、橘凜が初めて見せる、いつもの凜とした表情とは打って変わった表情に意外感を抱き見ていた。

 やがて呆気にとられていた大原さんも、ハッとし今度は俺に頭を下げる。


「殴って悪かった」

「い、いや」


 まさかこんな展開になるとは思っていなかったのでうまく言葉が出ずその場に佇む。

 ――

 キーンコーンカーンコーン。

 予鈴が鳴り静かな空気が流れていた教室にザワザワとした喧噪が戻る。


「やば、次の授業なんだっけ」

「私トイレ行こ」


 そんな声が聞こえ大原3人衆や田中君も自分の席に戻る。

 俺も少し遅れ自分の席に戻り授業の準備をする。

 5時限目、6時限目と授業は続いたがその間もこの昼休みの話で教室はザワザワと落ち着かない様子だった。


 聞こえてきた声は。

「田中君はやっぱり凄いね」

「橘さんってああ言う表情もするんだね」

「大原さん、やば」


 田中君を賞賛する声、橘凜の意外な一面をみたことへの声、大原さんを軽蔑するような声がヒソヒソと聞こえてきていた。

 ――――

 

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