決着 7-4

大原さんも先程までとは打って変わって、動揺しているのが見て分かる。


「何かの間違いじゃないの」


 大原さんの言葉を聞き斜め後ろに立つ2人に視線を移す。


「あれは南がやろうって言い出して」


 田中君に見られ自分たちも疑われると感じたのか、それを払拭するかのように取り巻きの一人上田さんが隣にいる阿部南を名指しする。


「ちょっと待って何であたしなの」


 名前を出され困惑したのか焦りながら言う。


「何か困らせる案はないか聞かれたからあたしは提案しただけ、それに賛同したのはあんたら二人でしょ」

「た、確かに賛同したけど結局行動に移したのは大原じゃん」


 罪のなすり付け合いがされる中、今度は自分が名指しされ殺気を浮かべ二人を睨む。


 二人はうっと一瞬ひるんだが、自分たちの疑いを晴らすためなおも続ける。


「大体話を持ちかけてきたのは大原で、あたしは最初断ったよ」

「私だってその場には、いたけど見てただけだし」


 二人は少しでも罪を軽くしたいのか自分の言い分を話す。


「でも、止めはしなかった」


 そこで今まで静かに聞いていた田中君が口を挟む。


「そ、それは」


 言いよどむ二人。

 何も言ってこない大原さん。

 三人を一瞥し田中君は続ける。


「この際誰がやったのかはいいんだ、なぜ困らせようとしたのか理由はあるの?」


 優しく問う田中君。


「...それは」


 諦めたような表情を浮かべ話し出す大原さん。


「転校してきて皆が橘の事チヤホヤするし、それに対して何でもないように振る舞ってたからうざくて。少しこまらせようと」


「そんなことで」

 対した理由でも無いことにふつふつと怒りがわいてくる。


俺の怒りに対して理由を聞いた田中君はなおも優しく問う。

「悪い事したと思ってる?」


「う...うん」

「なら、どうしたらいいか分かるよね」


 そう言い三人の行動を静かに見守る。

 三人はクラス全体に見られていることに気まずそうにしながら、ゆっくり橘凜に近づく。


「ごめん」

「あたしもごめん」

「ごめんなさい」


 大原さんから順に謝罪する。

 それまでずっと見ていた橘凜が三人の謝罪を受けて口を開く。


「許さない」



 橘凜の言葉に大原3人衆含め、クラス全体が困惑の表情を浮かべていた。

 誰もが大原3人衆が謝罪したことでこの件はこれで収まると思っていた。

 しかし謝罪したからと言って、許さなければいけないとは限らない。


 ここ数日何度も、同じように椅子を蹴られ、机の上の物が床に落ち、その時の謝罪も誠意のこもったものとは到底言えない。


 それだけでなく自分の使っている教科書を使えなくされ、はたしてこれで謝罪したから、反省の色を浮かべているから、許さなければいけないのか。

 ――――

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