決着 7-3
「どこがだよ、誠意も何もこもってねぇじゃねえか」
「自分で言ってんじゃん、誠意が感じられないって」
「はぁ?」
「言ったよね大原さんと同じように謝ったって。大原さんは悪いことしたらあんな風に謝るんでしょ」
「っこいつ、殺す」
殴りかかろうと右手に力が、込められるのが分かった。
明らかな苛立ち、いや殺意を向けてくる大原さんに言う。
「なら謝れよ、ちゃんと気持ち込めて誠意持って!」
言っていて感情的になっているのが自分でも分かる。
でも、もう我慢できなかった。
「うざいんだよ!」
今度こそ右手が再度頬めがけて飛んでくる。
「そこまでだよ。大原さん」
声に反応して寸前の所で右手が止まる。
声のした方に大原さん含め教室、全ての視線が一斉に集まる。
田中君だ。
「そこまでだよ、大原さん」
優しい声音。
発言と同時に大原さんに近づく。
田中君の登場に教室の隅の方で見ていたクラスメイトが期待に満ちた視線を送る。
そんな視線も気にした様子も無くゆっくり近づいてくる。
田中君は手で触れられる距離まで近づくと周りを見渡す。
倒れている机。
散乱した筆記用具、諸々。
当事者である大原さん。
その少し後ろの大原3人衆の2人の女子。
最後に俺を見て察して理解したのか。
「とりあえず手を離そうか」
優しく言うと大原さんはずっと掴んでいた俺の胸ぐらを離し、振り上げていた右手を下ろす。
「ここ最近の君はやたらと橘さんにちょっかいをかけていたみたいだけど、それはなぜ?」
「...それは」
言いあぐねている大原さんを優しくも鋭い目が離さない。
「言えないか。もしかして言えないような事してるわけじゃないよね」
「そ、そんなことしてない」
「そっか。なら国語の教科書を探していたのは知ってる?」
「さぁ?」
この期に及んでとぼける大原さんを鋭く目を細め訝しむ。
「そっか。でも...隣のクラスの子が見たって言ってたよ」
「なにを」
「大原さん達3人が、中庭にある蛇口の水で教科書を濡らし、そのまま捨てたって」
「まじ!?」
「......ひどい」
クラスメイトからそんな声が聞こえる。
――
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