6話 嫌がらせ 6-1

 屋上で陽菜との食事を終え教室に戻ってきたが、いつもと違う空気に違和感を感じた。

 ほとんどの生徒が戻ってきていたが、誰も自分の席に着かず端の方で固まりヒソヒソと話していた。


「なんかあったの」

「さあ?」

「大原さんが」

「あー大原さんか」


 話に耳を傾けると、大原という名前が出てきた。

 大原さんはクラスでも目立つ存在で、一部では女王様と呼ばれている。

 普段クラスの事や人の事に一切関心を持たない俺だが、今回は無視することができなかった。


 なぜなら大原さんの鋭い目が橘凜を捉えていたから。

 しばらく二人の様子を見ていたが本鈴のチャイムがなり、ダラダラと席に着き始める。


 俺も自分の席に着く際、何かあったのか聞くが、本人はなんでもないと言葉少なく答える。


 そう言われてしまうとこれ以上聞くことはできず、仕方なく授業に意識をむける。

 6限目本日最後の授業は科学で、実験を行うと知らされており5限目が終わった段階で遅れないよう、10分の休み時間を利用して科学室に移動する。


 皆が移動する中、俺も席を立ち教室を一歩でた所で物音に気づき足が止まる。

 音がした方に視線をやると大原さんと橘凜が向かい合っており、よく見ると橘凜が使っているであろう筆箱や、教科書が床に落ちていた。


「あ、ごめ~ん」

「ううん、大丈夫」


 見ていないので確かな事は言えないが、どうやら大原さんが橘凜の机にぶつかった拍子に落ちてしまったらしい。


 昼休み終了間際の異様な空気もあり気になったが、声をかけることはせず科学室に移動する。

 ――

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