お弁当 5-3

午前の授業も終わり昼休み。

 いつものように購買に行...かず。

 今日はそのまま屋上に向かう。

 途中、そこぬけに明るい声が後ろから聞こえてくる。

「なおくん!」

 振り向くと声の主が笑顔でこちらに歩いてくる。

 手には包装した物を2つ持って。

 ――

「さっそく食べよっか!お腹空いてる?」

「あ、ああ」

「ふふ、よかった!」

 陽菜が持ってきた包装された物を丁寧にほどき中身を見ると、食欲がそそられる光景が広がっていた。

 弁当箱の半分にはぎっしりと白米。

 もう半分には唐揚げ、肉団子、彩りを考えてかトマト、ブロッコリー、そしてリクエストした卵焼き。

「おお!」

 気づけばそう声をあげていた。

「どうぞ。お口に合うといいんだけど」

 不安そうな表情をして少し、顔を赤らめながら言う陽菜を横目に両手を合わす。

「いただきます」

「...おいしい!」

「ほんと!よかったぁ~」

 先程の不安な表情は消え満面な笑みを浮かべる陽菜。

 「ほんとにおいしいよ、これ作るの大変だったんじゃない?」

「全然大丈夫だよ!なおくんの喜ぶ顔を浮かべて作ってたらあっという間だったし楽しかったよ!」

「そ、そうか」

 満面の笑みを浮かべ、なんてことはないと言う陽菜に、どう反応したらいいのか分からず言葉に詰まってしまう。

 もっと作ってくれた料理の感想を言えたら良かったが、さっき陽菜がみせた満面の笑みをみて、考えていた言葉がどこかにいってしまった。

 今からでも言った方がいいと意を決したが。

 キン~コン~カン~コン。

 予鈴を知らせるチャイムが鳴る。

「戻ろっか」

 階段へと進む陽菜を呼び止める。

「今日はありがとう。すごくおいしかった」

「お粗末様でした!」

「今日のお礼がしたいんだけど俺にできることある?」

「お礼なんていいのに」

 いいながら進めていた足を止める陽菜。

 顎に手をあて逡巡する。

「なにもないなら...」

「ちょっと待って。今考えてるから!」

 どうやら考えている邪魔をしてしまったらしい。

 しばらくして考えがまとまったのか、下を向いていた陽菜が顔を上げ満面の笑みを浮かべ言う。

「デートしよう!!」

「え?」

 あまりに突拍子もないことを言われたので素っ頓狂な声がでてしまう。

「じゃあ、日程が決まったら連絡するね。」

 「あ、ちょ...」

 言いながら足早に教室に戻っていく陽菜。

「......デート」

 一人ブツブツ言いながら俺も教室に戻る。

 陽菜に言われた「デート」の意味を考え、地に足がついてない浮き出し立つような感覚で教室に戻る。

が......そこにはいつもと違う、不穏な空気が漂っていた。

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