5話 お弁当 5-1

 ~樋口陽菜side~

  誰かにお弁当を作るのはこれが初めて。

 でもなんでだろう苦じゃない。

 きっと渡す相手が彼だからだろうか。

 彼に初めて会ったのは小学校低学年の時。

 年齢とか細かいところは忘れちゃったけど、母親につきて行く形で隣の家に挨拶したとき。

 チャイムを鳴らして少し待つと玄関を開けたのが彼だった。

 その後すぐに京香おばさんが出てきて親同士の挨拶が始まった。

 当時の私はただ興味本位でついて行っただけだったから,会話に交じれる訳もなく退屈していた。

 そんな時声をかけてくれた彼。

「一緒に遊ぶ?」

 当時から人見知りなどしない性格だった私はすぐ彼と遊ぶことに。

 母親に一声かけ近所の公園に行き,かけっこをしたり、木登りをしたり,時間を忘れて遊んだ。

 それから彼とは年齢が同じ事、通っている小学校が同じ事を知り自然と一緒にいる時間が増え、仲良くなるのに時間はかからなかった。

 仲良くなってからは休み時間や登下校も一緒で同性の子達より彼と一緒にいる時間の方が多かったと思う。

 でもそれは、小学校までの話。中学にあがりまた同じ学校に通える事が嬉しかった私は今まで通り接していた。

 けど2年生に進級し別のクラスになった私達はだんだんと距離ができてしまった。

 話す機会は減り廊下で見かけても話すことはなくすれ違うだけ。

 3年に進級した頃にはそれが当たり前になっていた。

 私はコミュニティができ,その子達と一緒にいる時間が増えたが彼はいつも一人だった。

 私が知る彼なら友達に囲まれ笑顔がたえない学校生活をおくっているものだと思っていたけどすれ違うとき、ふと教室で見かけた彼の表情はあまり思い出したくはないものだった。

 ――

 

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