幼馴染み 3-5
――
教室に戻るとクラスメイトの姿はなくどうやら帰りのHRも終わったらしい。俺も帰ろうと荷物をまとめ、教室を出ようとした時自分がいる方とは逆の扉が開き、聞き覚えのある声がした。
「あ、戻ってたんだ、すれ違いになっちゃたね」
「帰ってなかったんですか?」
「うん、心配だったから」
「すぐ行こうと思ったけどみんながいる手前どうしても行けなくて...」
「心配していた」という言葉にジーンとし涙が出そうになったがグッとこらえ。
「ありがとうございます、帰りましょう」
そう短く言い二人で教室を後にした。
家に着き玄関を開け片足を踏み入れようとしたとき声をかけられる。
「なおくん、どうしたのそのケガ」
心配そうな表情をうかべ声をかけてきた一人の女の子。
声のした方に視線をやると懐かしい顔がそこにはあった。
小さい頃から知っている幼なじみの樋口陽菜。《ひな》
「陽菜。これは体育の時間にボールが当たって...」
「そっか、ていうかなんか久しぶりだね」
「そうだな」
ほんとうに久しぶりな気がする。
同じ高校に通っていることは知っていたし、学校で見かけたこともある。
だがこうして顔を合わせ話すのは久しぶりだ。
「なおくん、私のこと避けてるよね」
不意にそんなことを言う。
「それは...」
避けているつもりはない、ただ高校に入ってから同じクラスになってないし、あまり接点もない。
それに俺と陽菜では住む世界が違う。
ただそれを言っても陽菜からしたら言い訳にしかならない。
「嫌いになった?」
「違う!!」
思わず大きな声をだしてしまい、ハッとする。
そうじゃない、中学の二年までは今まで通りだったでも「あのこと」があってから俺は人と関わるのが怖くなって人を避け一人で過ごすようになり、陽菜とも関わらないようにした。
それでも陽菜は変わらず接してくれた。
中学二年の後半から女性としての魅力が出てきてクラスでも人気者になった陽菜と常に一人でいる根暗で地味なやつ。
それをクラスの連中はよく思わなかった。
それを知った俺は陽菜に対し冷たい態度を取りわざと嫌われるようなことも言った。
そうしてるうちにクラスメイトも「あいつとは関わらない方がいいよ」と陽菜に言い陽菜もそれ以上関わる事はしてこなかった。
三年になり卒業する頃にはもうすっかり赤の他人のようだった。
「私、あの時なおくんがなんであんな事したのか分かってるから」
「...」
――
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