幼馴染み 3-2

屋上へと続く階段に足をかけたとき呼び止める声がする。

「米沢、ちょっといいか?」

 振り向いて声の主を確認すると同じクラスの田中君が立っていた。

 田中君はクラスでも中心的な存在でザ、陽キャといった生徒だ。そんな田中君が何の用だろうと訝しんでいると。


 「聞きたいことがある」

 田中君はいたって真面目な表情を浮かべている。

 そう言われてしまっては無視するわけにいかず二人で人気のない所に行き話をすることに。


 周囲に人がいないことを確認すると田中君はずいっと顔を近づけて。

「お前、橘さんと仲いいのか」

「...??」


 なぜそんなことを聞いてくるのか分からずポカーンとしていると。

「授業が始まる前、なんか話してたろ」


 先生が点呼を取っている間の事を言っているのだろうか、あの時は声を最小限にして話していたし田中君の席からは聞こえないはずだが、可能性があるとしたら話しているのを見ていたのか、まあ別に見られてはいけないわけではないが俺と橘凜の関係を先生以外に知らせる必要はないと思い黙っていることにしたが、言ってしまって良いだろうか。

 へたなことを言っても納得しなさそうだし、ここは。


「昨日教科書見せたことに対してお礼を言われて」

「それだけか」

「うん、それだけ」


 納得したのかしてないのか分からないが興味をなくしたのかふーんと言って教室の方に戻っていった。

「なんだったんだろう」


 考えつつ時間が迫ってきているのを思い出し急ぎ足で屋上へ。

 食べながら先程の田中君に対して1つの答えが出る。

 それは田中君は橘凜の事が...。

「いや、はやくない!?」


 出会って日もたっていない、話をしたのも昨日の今日。それで人の事を好きになるものなのか。俺自身、人を好きになったことはあるしそういう気持ちは分かるがいくらなんでも早すぎやしないだろうか。田中君に確認していないからあくまで俺の予想にすぎないが。(まあいっか)


 切り替えて買ってきたパンを食べ昼寝でもしようかと体を横にした瞬間予鈴のチャイムが鳴る。


 予鈴は本鈴ではないためまだ時間はあるが大体の生徒はこの予鈴で教室に戻り次の授業に備える。


「はぁ」

 ため息を吐き重たい足取りで教室に戻りながら次の授業がなんだったか思い出す。

「あー、次は体育だ」

 着替えなければいけないので体操着を取りに教室へ戻る。

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