転校 2-4
「ただいま」
「おかえり凜ちゃん、学校どうだった?」
帰って来るなり心配していたのか訪ねる母に対し平然と答える。
「緊張したけどなんとかやっていけそう」
「そう、ならよかった」
それを聞いた母親も安心したのかそれ以上聞くことはしなかった。
まあ今日の様子をみるに大丈夫だろう。
そう内心つぶやき自室に戻る。
――
帰ってきてからは普段と変わりなく晩ご飯を食べ何気ない会話をしていた。
俺、橘凜、母親。の三人で直久さんは仕事が終わっていないらしく帰るのが遅くなるため自分の事は気にせず三人で食べてほしいとのこと。
三人で会話をしているときも母親が中心となり、話を振っては広げ何かと気を遣っているのが分かった。
自分でもこれはまずいと話を振っては見たもののうまくいかず気まずい空気が流れていた。
「もう少し上手く出来たらなぁ」
湯船につかりながら独り言つ。
お風呂から出ると時刻は22時を回っていたので翌日の事を考え、少し早いが布団に入り体を休めることに。
次第に眠気に襲われ意識を手放そうかという所で扉をノックする音がした。
「まだおきてる?」
橘凜の声、控えめなこちらを伺うようなそんな声。
「どうしました?」
言いながら扉を開けるとやはりと言うべきか申し訳なさそうな表情で立っていた。
「パソコンの調子が悪いみたいで見てくれない?」
「わかりました」
パソコンならつい数日前に頼まれて使えるようにしたはずだが。
疑問を浮かべながら部屋に行き、確認することに。
パソコンを確認する前に部屋の空気感の違いに驚いた。
昨日、今日部屋を明け渡したのにもうそこは橘凜一色に染まったような空気感がして、そのせいかほのかに良い香りが部屋いっぱいに広がっている。
そんなことを考えているのを切り替えるため、少し大げさに咳払いをし意識を切り替える。
「ネットに繋がらなくて、携帯は繋がってるんだけど」
特にこちらのことは気にした様子がない橘凜は不安げな声でそう言う。
「見てみます」
見るとネットに繋がっていればその証拠としてアンテナのようなマークが表示されるが今は地球儀のマークが表示されていた。
試しに使っているwifiのパスワードを打ち、しばらく待つと地球儀からアンテナのマークに変わった、が。
すぐに地球儀のマークに変わってしまう。
「俺の部屋の状態見てきます、ちょっと待っててください」
「うん、ごめんね」
自分の部屋を確認したが問題なかった。
橘凜の部屋に入るとき一応ノックをしてから入り、問題なく繋がっていることを伝える。
「うーんなんででしょう」
「わかんない」
二人して頭を悩ましているとあることを思いつく。
俺はすぐ行動し繋がったか聞くと。
「うん、繋がってる!」
嬉しそうな表情を浮かべているのをみて安心しパソコンを確認するとアンテナのマークが表示されていた。
しばらく待っても変わることはなかったのでこれで一安心だろう。
用は済んだので自室に戻ろうと立ち上がろうとしたとき、背中に何かを乗せられた感覚があった。
体勢を変えず眼だけで確認すると背中に橘凜の頭が乗っており、スースーと気持ち良さそうに寝息をたてていた。
転校初日で色々と気を張っていたのが家に帰ってきて肩の力が抜けたのだろう、そう勝手に納得し、起こすのも悪いので自分の体を少しずつずらし体に力を入れ起こさないように橘凜を持ち上げてベットに移す。
物音を立てないよう静かに部屋を出て自室に戻り今度こそ眠りにつき一日を終えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます