転校 2-3

 それからは保健室、体育館、グラウンド、図書室、音楽室、科学室。思いつく所は全て案内をした。

 「だいたいこんな感じかな、一通り案内出来たと思います。なんか気になることありますか?」

「屋上って行けるの?」

「行ってみますか?」

「うん」


 質問に質問で返したが特に気にした様子はなく二人で屋上へ。

 屋上まで人気の少なくなった校舎を歩いているとまるで二人しかいないような錯覚に陥る。


 グラウンドで部活をしている声や体育館で部活をしている声は聞こえてくるがそんなのは些細なことだった。

 言葉は交わさず静かに屋上へと足を進める。

 不思議とこの静けさが酷く心地いい。

 ――

屋上の扉を開くと風が一気に押し寄せてくる。

 その風に彼女の黒髪がなびく。

 髪をおさえつつ彼女が言う。

「こんな景色が綺麗に見える場所があるんだね」

 放課後の屋上は初めて来たが確かに綺麗だった。

「あ、もしかしてお昼休みここにいた?」

「はい、だいたいここで過ごしてます。」

「そっか」

 何かを察したように短く答える橘凜。

「遅くなったし帰りましょう。」

「うん」

 ――

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