第2話 転校 2-1
橘親子が引っ越してきた翌日娘の凜は転校という形になるため案内の意味もこめて一緒に登校していた。
道中道行く人がこちらにいや、隣を歩く美少女に視線を送っている。
(うわ、かわいいー)
(あの人モデルかな-)
サラリーマンから同じ歳ぐらいの子まで賞賛の声が上がっている。
一方で...。
(隣のあいつだれ?)
(なんであんなやつが隣歩いてるの)
そんな声も聞こえてくる。
両極端な声が聞こえる中なんとか学校に到着した。
「なんか、疲れた...」
独りごちながら教室には行かず先生の待つ職員室に向かう。
「おはようございます、担任の先生はいますか?」
誰に言う訳でもなく声をかけるとそれに気づいた担任の先生がこちらに向かってくる。
「あ、おはよう橘さんね?」
「おはようございます、橘凜です」
「うん、よろしくね」
「じゃあ先生俺はこれで」
「あ、ありがと」
先生に一言断りを入れ先に教室へ。
教室に入るやいなや誰にあいさつするでもなく自分の机に腰掛けそのまま机に突っ伏し、朝のホームルームまでの時間を潰す。
しばらくするとHRを知らせるチャイムが鳴る。友達同士で談笑していた生徒達も各々席に着く。
ほどなくして担任の先生が教室に入り教壇の上に立ち挨拶もそこそこに。
「今日は皆さんにこのクラスの新しい友達を紹介します」
そう言うとクラスメイト達は期待する声をあげる。
「どうぞ」
先生の合図と共に控えめに入り口の扉がノックされ。
「この学校に転校することになりました、橘凜です。よろしくお願いします。」
少し硬い挨拶に思えたがそんなことは関係ないらしく教室は黄色い歓声があがっていた。(特に男子生徒から)
橘凜はどうしていいか分からないといった表情をしており先生は落ち着かせるように声をかける。
「はい、みんな静かにして」
しかしそんな先生の注意もむなしくしばらくの間歓声は止まなかった。
ようやく落ち着いてきた所で先生が「みんな仲良くするように」と伝えるとみな口々に「当たり前じゃん」「よろしくね~」
などフレンドリーに声をかけていた。
「橘さんは一番後ろの空いてる席に座って」
「はい」
先生の言うとおり教壇から席に移動すると。
「っち、なんであいつの隣なんだよ」
「意味不明」
などなど朝学校にくる途中にも聞いたような声が聞こえてくる。
(そういうのはもっと小さい声で言ってくれ、それか本人がいないところで言ってくれ)
そんなことを心の中でつぶやく。
「じゃあ教科書開いて」
先生が授業を開始する言葉を口にするが教室はどこか浮き足立っているような空気がある。
橘凜の一挙手一投足にみな視線を釘付けにしている。
さきほど教壇から指示された席に着くまでの短い距離でも皆の視線を集めそれに気づいているだろうが,特に気にした様子はなく凜とした姿が印象的だった。
「橘さんは教科書ないだろうから隣に見せてもらって」
するとまた。
「なんであいつなんだよ」
「調子にのるなよ」
主に男子からそんな風な言葉が聞こえてくる。が、気にしてもらちがあかないので席をくっつけ教科書を二人の真ん中に置き見やすいようにする。授業は進み時折先生に言われた箇所を見るため体と顔を教科書の方に寄せると向こうも同じ体勢になるのか距離が近づく。そのたびにフワッと香る香水なのか、シャンプーなのか分からないが良い香りが鼻腔をくすぐる。
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