再婚1-5

一言そう言い自室に戻ろうと、階段を上がり扉に手をかけると。

「ねぇ」

 後ろから声をかけられる。振り向くと橘凜が立っていた。

「さっき何言ようとしてたの」

 さっきというのが分からなかった。食事の時は話しかけようとしたが出来なかったし俺が話しかけたと言えば食事の前しかない。思い当たる節がそれしかないと思い。

「しょく――」

「食事の前なにか言おうとしてたよね」

 先に言われてしまった。

「対した事じゃないので、おやすみなさい」

「あ、ちょっと...」

 なにか言おうとしていたが気づかないふりをしてそのまま自室に戻り、あの時の事を思い出す。

 話しかけたはいいものの何を話すか全く考えていなかった。完全に見切り発車だった。

(でもさっきの態度は良くなかったよなー)

 今からでもさっきのことを謝まりに行こうと思ったが時計を見ると22時を回っていた。

(やめておこう、明日からまた学校だし、今日はもう寝よう。)

 そう自分に言い聞かせ布団に入ることに。

 布団に入りしばらくすると「コンコン」部屋をノックされたのが分かった。両親はまだリビングで談笑しているっぽいしそうなれば一人しか居ない。明かりをつけ扉を開くと。

「手伝ってほしいことがある」

 何だろうと首をかしげると、荷造りが終わっていないとのこと。

「そんなに時間はかからないと思うから」

 どうしたもんかと逡巡していると

「今日はもう遅いし明日やるよ」

 諦めたようにそう言い自室に戻ろうとした。

「手伝います」

 さっきのあの態度のことも謝れるチャンスと思い気づけばそう声をかけていた。

 ――

部屋に入ると、持ってきたであろう荷物が段ボールにまとめられていてそれぜれ「学校制服」「私服」「下着」など分けられていて他にもテレビやpcも持ってきているのが分かった。なにをすればいいか大体予想はつくが勝手にするのは良くないと思い聞くと、「テレビをそこの台に置いてほしいのと、pcをネットに繋げて使えるように設定してほしい」とのこと。

 俺を呼んだのは主にこのテレビを台に乗せるためだろう。そんなに大きくないが女の子一人が持つには少々荷が重いように感じた。台に置き映るか確かめるため電源をつけようとするがリモコンが見当たらない。あたりを見渡すがやはり見つからず聞いた方が早いと思い振り向くと段ボールから下着を取り出しタンスにしまうところを見てしまいあわてて視線を天井にむける。

 幸い本人は気づいておらず荷造りを進めていた。今声をかけるのは良くないと思いテレビ本体の方から電源をつけることに。

 無事に電源がつき時間帯も23時にさしかかろうとしているのでニュースが流れていた。

「よしついた」

俺は背をむけたまま独りごちると俺の声に気づいたのかテレビの音に気づいたのか作業の手を止めこちらを向いた。

「テレビついたんだ、リモコン必要だったんじゃない?」

「本体からつけたから大丈夫です」

 そう言うとそっかと言葉少なく言い作業に戻る俺も頼まれていたもう一つの方にとりかかる。

 pcの方は初期設定などは終わらせていたのでこの家のwifiに設定し直せば問題なくネットに繋がったのですぐに終わった。

 作業が終わったことを報告しようと振り向くが先程のようなことがないよう慎重に振り向く。さすがにタンスにしまい終えていたので一安心した。

「設定終わりました問題なく使えると思います。」

「うんありがとう」

こちらに背を向けることなく短く答えたんたんと荷造りを進めていた。頼まれていたことは終わったので長居してもしょうがないと思い声はかけずに部屋を出て自室に戻った。

 俺は部屋に戻るなり布団に入り今日の事を思い出す。二人が家に来てから失礼はなかったか、家の案内をするときわかりづらくなかったか、睡魔におそわれ意識が薄れていくなかそんなことを思う。

「これからどうなるんだろう。あ!謝るの忘れてた...」

 そんなこんなで不安もあるが意識をてばなし今までとは違う新しい日を迎える。

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