強制結婚
「え、、その被り物………何ですか?」
「……この度はお手紙ありがとうございます。アリナと言います。よろしくお願いいたします。」
「あ………はい、ありがとうございます。えっあ!お、俺、いや僕の名前はっ、オレリアンって言います。よろしくお願いします!」
被り物のことは聞いちゃいけないのかな、まるで「聞くな」と言わんばかりの会話の早さに俺は動揺を隠せずにいた。
「本日はいかがでしたか?民衆など大丈夫でしたでしょうか?」
「はい、その点についてはなんとか………」
最初の出来事が気になりすぎたせいで俺は会話にまったく集中ができず、相手からの質問を返した後は自分から会話を振ることを全くしなかった。そのせいでお互い無言の気まずい空間だけがそこには残った。
「………」
相手の顔色を伺おうにもそもそも相手は顔が見えない。俺は顔が見たいんだ、見たくてここにきたんじゃないのか?民衆はいつも姫のことを悪く言うけど、俺はあの顔や髪型がめっちゃ好きなんだよ!!
鼻筋はすっきりと通ってるし、目だってでっかい!少しぱっつん系な髪も俺はめっちゃ可愛いと思うし、何より笑顔があったかい、とにかく俺はゾッコンなんだよ、本当に好きなんだ………好きなら、好きって言わねえと、、
「あっあの、本当にわがままかもしれないです。でもっ、一度でいいですから見たいんです、被り物とっていただけませんか………?」
「………」
「お願いします、お願いします、どうか。」
必死に何度も頭を下げた、何度も何度も。それでも姫は被り物を取ろうとする素振りすらいつになっても見せてくれなかった。
「やはり、ダメですかね、」
心の中でストンと音がした。折れたのかもしれない。そう諦めかけたその時だった。
「ごめんなさい。ずっと黙ってしまっていて。ダメですよねこんなのでは。」
「………!そんな!大丈夫です!お気になさらず、僕の勝手なわがままですから!」
「いえ、そうじゃないんです。お母様から言われてて、被り物を外してはいけないと。」
「どうして、ですか?」
「だって、私は姫らしくないんです。昔からずっと子供らしい丸顔で、ちっとも姫らしくない、大人っぽくもなんともない、こんなんじゃダメってわかってるのに………」
「いや僕は勝手ながら姫様の顔すごく素敵だなと思っておりました。なんだかこんなこと言うのはお恥ずかしいですが。」
自分の口角がだんだんと上がっていくのを感じて恥ずかしさがさらに加速し、やがて顔も真っ赤に熱くなった。
「………え、と、、それは、どういうこと、?」
「ああっすいません!急にこんなこと言ってよくない………ですよね?すぃません!」
「いやなんで謝られるんですか?すごく、嬉しいです笑」
笑った、笑った、笑ったんだ!俺のことで、姫様が笑った!笑われた!あの被り物の奥で俺が惚れた笑顔が真っ赤に染まってたりしてたら、俺はもう今日死んでもいい!
「ならっ、やはり被り物とっていただきたいです!どうか、お願いできませんか、?」
「………わかりました、内緒ですよ?」
「はい!もちろんです!」
やった、やった、俺はついに目の前であの一目惚れした顔を見ることができるんだ!大好きな笑顔をっ!
カタッ
彼女は1度下を向いて、顔を隠していた被り物を静かにとると俺の目をまっすぐに見つめるようにして前を見た。
応接室に一つしかない窓から差し込んできた雨雲を切り裂いた太陽の燃えるような光が、姫様を眩い光で照らし、包み込んだ。
「ど、どうでしょうか………?」
顔は真っ赤だった。
「死んじゃいますぅ………」
「え!ちょっと!困りますっ!」
初めての顔合わせはオレリアンにとって最も満足な形で終わることになる。しかし、この数日後にある手紙によってオレリアンは大きな絶望を経験することになる。
◆
「姫様!!」
「はい、なんでしょう?」
「また王女様に手紙が!!それも、町1番のお金持ちであるロブソン様からです!」
「え、本当ですか………!確か前手紙を送ってくださったオレリアンさんは、なかなか貧相な方でしたよね?」
「ええまあ、でしたね。」
「ならば即決です。アリナの結婚相手はそのロブソンさんにいたしましょう!」
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