第2話 ユキとの日々の中で

ユキが家に来てからというもの、さくらの生活は一変しました。学校から帰ると、玄関にはいつもユキがしっぽを振って待っていて、さくらはそのたびに大きな声で「ただいま、ユキ!」と言って駆け寄ります。


ユキもさくらに負けないくらい元気よく飛び跳ねて、まるで自分もさくらと一緒に遊びたいんだと伝えているかのようです。


二人はすぐに仲良くなり、毎日が冒険のように楽しくなりました。週末には、美咲も一緒に近くの公園に出かけて、さくらとユキがかけっこをする姿を笑顔で見守ります。美咲の心にも、少しずつ明るさが戻ってきていました。


ある日、美咲は公園のベンチに座りながら、ふとさくらとユキを見つめていました。さくらは笑顔でユキと遊んでいましたが、美咲はさくらの後ろ姿にどこか儚さを感じていました。


「さくら、最近よく笑うようになったね。でも、本当に心から笑えているのかな…?」


美咲はそう思うことがありました。夫を失ってから、美咲は必死にさくらを支えようとしてきましたが、自分も悲しみを隠しきれず、時にはさくらを心から抱きしめることさえできずにいました。その心の隙間を埋めてくれるのが、ユキだったのです。


ユキが家に来てから、さくらは以前よりも家で過ごす時間が楽しくなりました。ユキに話しかけたり、一緒にお昼寝をしたり。まるでユキが自分の心を癒してくれているかのようでした。


しかし、ユキと過ごす楽しい日々が続く中で、ある日のこと、さくらは学校から帰ってくると、ユキの様子がいつもと違うことに気づきました。


いつもならさくらの姿を見てしっぽを振りながら駆け寄ってくるユキが、その日はじっと寝転がったままで、さくらを見つめるだけでした。


「ユキ、どうしたの?」とさくらは不安そうにユキに近づきました。ユキはゆっくりと頭を上げ、さくらの手を優しくなめましたが、その目はどこか疲れた様子を見せていました。


美咲も心配になり、ユキを抱き上げてみると、ユキの体はいつもよりも熱く、少し元気がないようでした。美咲はすぐにユキを動物病院に連れて行くことにしました。


さくらは病院の待合室で、美咲の隣に座りながら、心配そうにユキを見つめていました。診察室から戻ってきた獣医さんは、少し険しい顔で美咲に話しかけました。


「ユキちゃん、少し様子を見た方がいいですね。何か大きな病気ではないかもしれませんが、しばらく安静にしておく必要があります。」


美咲とさくらは、家に帰るとユキを優しくベッドに寝かせ、そっと見守りました。二人とユキとで過ごす穏やかな日々に、少し不安が影を落とし始めたのです。


この日を境に、さくらはユキのことを心から大切に思うようになりました。自分の友達であり、家族であり、そして何よりもかけがえのない存在であるユキに、何かあったらどうしようと、毎日不安でいっぱいでした。


そんなさくらの気持ちを察するかのように、ユキも少しずつ元気を取り戻し、再びさくらと一緒に遊ぶようになりましたが、さくらの心には何かが引っかかっていました。


それは、ユキと過ごすこの瞬間が永遠ではないのだということを、初めて感じ始めたからでした。

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