困った元カレ

世衣は目を丸くする。

珠羅は、もう、どうとでもなれというふうに、顔を赤らめながらも世衣を見た。


世衣は口元に手を当てる。


「無理でしょ。」


そう言いながら、少し恥ずかしそうに鼻先を触る。


「そういう冗談は言うもんじゃない。」


――冗談?冗談ってとられたの?あたし。


「冗談じゃないです。あたし、世衣君に一目惚れしました。一度付き合ってください。嫌なら別れればいいし・・・」


世衣は席を立った。


「聞かなかった事にするので大丈夫です。珠羅さんは、館長の娘、俺は居候の指導者。それだけの関係です。」


世衣は和室に戻り、トレーニングウェアに着替えた。


「走ってきます。」


そういうと、キャップを被り、玄関を出た。


――そうだよね。知り合って次の日に付き合ってって、そんな子、いないよね。


世衣には、女子高生の軽い気持ちにとれたが、珠羅の心の中には、世衣でいっばいだった。


それから珠羅は世衣を意識しながらも、気持ちを抑えながら生活を続け、1ケ月が過ぎた。


「珠羅、また付き合ってよ。」

「はあ?何言ってんの?浮気したのはそっちでしょ?」


学校帰り、自転車をこぐ珠羅の後を元彼の基裕もとひろが追いかける。


――何勝手な事言ってんのよ。あんたが浮気して別れたのに・・・


1年前、珠羅と基裕は、同じ部活で知り合い、意気投合。

優しくて明るい基裕に惹かれ、基裕もまた、可愛くて大人しい珠羅が気になり、基裕からの告白で、2人は付き合う事になった。

初めてのデートの帰り、基裕は珠羅を家まで送る。


「え。珠羅の家、ここなの?」

「うん。お父さん、テコンドーの師範なの。」


大人しい珠羅とは真逆のイメージに、基裕は驚いた。


「お父さんに見つかるとウルサイから・・・。」


珠羅は人が来ないうちに、基裕と別れれようとした。


「ちょっと待って。」


基裕は珠羅を引き止める。


「キスだけしてもいい?」


基裕は顔を赤くしながら珠羅に尋ねる。

珠羅は、恥ずかしかったが、ギュッと目をつむった。

柔らかく、温かい唇が、珠羅の赤い唇に重なる。

初めての、なんともいえない感覚に、珠羅は体が熱くなった。

2人の唇がゆっくり離れる。


「嫌じゃなかった?」


そう基裕が聞くと、珠羅は首を縦に振った。


交際から1ケ月がたち、人気の無い授業後の体育準備室。

2人は熱い口づけを交わす。

珠羅は基裕の首に手を回し、求めるように、基裕の口に舌を入れる。

お互いの舌が絡み合い、感情が高まる。

基裕は、珠羅のブラウスをたくし上げ、ブラをずらし、指先でトップを激しく転がした。


「あっ、んっ」


思わず漏れる声にますます興奮した基裕は、そのままスカートに手を入れ、下着を脱がすと、珠羅を仰向けに寝かせ、足を開いた。


「あ、いや、見ないで、恥ずかしい。」


基裕は、恥ずかしがりながらも、溢れ出る珠羅のソコに顔をうずめた。


「ああ・・・!!」


なんともいえない感覚が体を走る。


「もうダメだ。入れていい?」

「うん。」


基裕は、ゆっくりと入れる。


「ん、んんっっ。」

「痛い?」

「大丈夫・・・」


―――うっ・・・!痛い・・・!


一瞬の痛みが襲った後、基裕はゆっくり腰を動かした。


「ああ、イキそうだよ。」


そう言うと、基裕は果てた。


・・・・それまでは、淡い青春の思い出だ。


「とりあえずさぁ、家についちゃったから帰ってもらっていいかな。」


珠羅は家の前に自転車を止める。


「ほんとにゴメンって。浮気っていうか・・・そんなつもりなくて。ほんとに好きなのは珠羅だから。」


基裕も自転車から降り、両手を合わせてひたすら謝る。


「ごめん、あの、あたしもう・・・」


カチャ・・・


音がし、2人は玄関を気にする。


「あ、おかえり。」


世衣だった。


「あ、珠羅さん。おかえりなさい。」

「世衣君・・・ただいま・・・」


世衣は珠羅の隣を通り過ぎる。


「こんにちは。」


基裕に気づいた世衣は、驚いて固まる基裕に挨拶をした。


「あ、こんにちは。」


大柄な世衣に圧倒されて、基裕は会釈をする。


「珠羅、あの人だれ?」


基裕はコソコソっと珠羅に尋ねる。


「あの人、あの人は・・・彼氏!」

「え!?」


基裕は驚いて声をあげ、世衣は振り返った。


「あたし、この人と付き合ってるし、一緒に暮らしてるから!また付き合うとか無理だからね!親も公認で、一緒に住んでるんだから!」

「い、一緒に!?」

「珠羅さん・・・」


基裕は顔を赤らめ、2人を交互に見た。


「珠羅さん、そういう事を言うもんじゃない。」

「ほ、ほんとよ!あたし、世衣君の事が大好きだから、もう邪魔しないで!」


基裕は、しゅん・・・と落ち込み、カシャン・・・と自転車をひき、トボトボと引き返して行った。

後ろ姿を心配そうに見送る世衣。


「珠羅さん、なんであんな事・・・。」

「ごめんなさい。元カレで・・・また付き合ってってしつこいから・・・。」


はあ・・・


世衣はため息をつく。


――こんな事して・・・あたしの事、嫌いになったかな・・・


うつむく珠羅に、世衣は言った。


「よりを戻したくない理由で言っただけならいい。本当の彼氏ができるまで、そういう話にしとけば。」


――え!?


「世衣君、いいの!?」


珠羅は嬉しそうに顔を上げた。


「でも、俺が本当に珠羅さんと付き合う事は無いから・・・ごめんだけど・・・」

「え・・・・」


ドクン・・・

ドクン・・・


珠羅の鼓動が早くなる・・・


「まったく・・・ないですか・・・」

「うん・・・ごめん・・・」

「あたしの事・・・嫌いですか・・・」


――イヤだ、泣けてきそう・・・


「嫌いじゃないよ。ただ・・・」


「俺、年下、好きになった事ないから・・・」







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