Episode 2 最後の暴君

 君は最後の暴君の物語を知っているか?

 ギルベルト・テトラニクス、この星に刻まれた三万年の文明史を巡っても、こいつ以上の大馬鹿が見つからない、それほど破天荒なバカモノだ

 ただの自己満足に過ぎない愚かな計画のために世界征服を果たして、前代未聞の戦争と圧政を広げ、そして裏に自分の部下と臣民を裏切り、レジスタンスに助力し、敢えて自分の打倒を目論見る

「余には時間がないだ。例え余が改革を目指すでも、総督や将軍たちが認めないでしょう。そもそも上から下への改革が所詮不完全であり、この世界を真に文明へと導くのは、下から上への徹底的な革命じゃないといけない。しかし余も所詮皇帝の座に縛られたたったひとつの人間、余の手では成しえないこと、その代わりに君たちが成す。」っと、自分に立ち向かう勇者ミライヴィアの一行にそう語り

 自分も知りなから、あんな見た目だけがいいのふざけた計画を仕上げて、身勝手の-善意をまき散らす、死ぬ直前すら自らの過ち、そのふざけた計画にどれだけの抜け穴があるのも認識してない所か、逆に自慢していた

 だから悪役として倒された、本当に万死に値する罪人

 万が一、自分の後継者が失格したらどうする?

 そうならば、余が再びヤツを落とすーーっが、そこまでは至らず。その結果、僥倖で完璧な人選であるミライヴィアに出会った

 そもそも今から考えれば、自分の戦力にも過信した疑いもある

 だが更に先の事、全然考えていない

 万が一、自分の後継者が倒されたらどうする?

 そして現実ーー今はそれに似ている状況に至った。ミライヴィアは三年後の戦いに行方不明となり、無論彼女に継ぐべき帝国も崩れ落ちる

 六百年続く栄光の歴史を持つ大帝国フレイティアを壊滅した上、世界も再び暗黒の時代に戻りて、野蛮と愚痴に満ちた時代は千年ほどに続いていたーー善き進歩ところが、まるで原始社会に逆戻り

 元々帝国の拡張によって消滅したはずの神々への信仰は世界が暗黒の時代に戻ったと共に捲土重来、月の女神への信仰ーー「月神教リュヌドリック」が世界を精神から統一

 何という失策!もう先祖レムスに顔向けない、不孝極まりの愚かな末裔!

 自分自身への怒り、若さ故の過ちなんどに誤魔化せない罪、心に満ちた不安と慚愧によって本を取る小さな両手も震え

「やはり、これが私への...罰だな。こうして生き返すのも...」

 止まらない清らかな涙は丸く金色の瞳から零れ落ちる、可愛いそうに小さなをめっちゃくちゃにした

「よし、よし、ルナちゃん。怖がないで、パパはここにいるよ。」

 ルナティアの頭を優しく撫でるこの灰髪の男はスミス、ルナティアの父であり、この海邉の小さな漁村ソモンにいて唯一の鍛冶屋

 元々帝国の皇帝たるギルベルトごとルナティア、生まれ変わった先は豊かでもないが貧しくもない、極めて普通だけどその普通さも珍しくなる中産の家。父スミスは鍛冶屋で母親ナンナは商人の娘、こんな辺境の村で暮らす庶民の一家

 果てしない戦と政治の渦から身を引く、うみ変わらないけど幸せな日々、こうして12年まで過ごした

「これが全部、私のせいよ。もしあの時、私じゃないと...」

 両親の前では本性を晒すでも子供みたいな言い方になる。そして、他の誰かが帝国を継ぐたら...っと言い出せない。その前にまた母親に慰めた

「ルナちゃんのせいじゃないよ?」

 家族を騙したくない、っと思うルナディア。12年の間、幾度自分の本体、すなわち自分がギルベルトの生まれ変わりである事を親に伝いでも、いつも子供の冗談と扱われ、誤魔化した。まぁ、自分の大事な娘はそんな二千年前の大罪人の生まれ変わりなど、誰でも信じたくないだろう

 暖炉の炭火が静かに燃やす、窓から吹き込だそよ風に合わせて緩やかに揺れる。そこに座るのはただ、泣いた娘を抱きしめた親が二人

「もう...ルナは大丈夫だから。」

 12歳の夜、誕生日のプレゼントとして、両親に「最近二千年の歴史を記された本」を願った結果、それに読んで自分勝手に泣いたルナティア

 しかし、後悔しても何も変わらない。十数年の皇帝生涯を生き抜いたルナティアギルベルトは分かる、力なき意思では何も成しえない

「ルナは大丈夫ですから。」両親の顔から不安を見て、もう一度言い直したルナティア、本を閉じて椅子から跳び下りて「私は大丈夫、もう寝るから。」

「もう...寝ちゃうのか?」

 夜の星明りが薄々と見えるが、まだ急いで寝るべき時ではないはず、ルナティアの突然な行動に不安を感じたナンナは心配そうな声で問う

「はい、お母さま。」

 自分の強気を示すような、まだ発育していない胸を張って大きな声で答えたルナティア、そのまま二階に登って自室に戻った

 親に多分知らないのか、彼女はあの僅かの間で今後の計画を仕上げた。そして今夜が冒険の始まりになるっと

 自分の過ちを償う為に、自分のせいで砕かれた帝国と世界を再び立て直すしかない。そして帝国を立て直すために、力が必要

 体を鍛えることは毎日こっそりやっているが、時間的に間に合わない。もっと早く力を取り戻すために、帝国時代に残した装備品を発掘するのが一番早い

 でも、そんなものを身に着けても、戦えるとは言え、自分の力じゃない。そもそも兵士に配ったもの、戦力が一人以上を超えるのが難しい。でもまぁいい、ないよりマシだーーそう思って、大人しく夢に陥る私

 ここまで遅れてごめんね、私は、いや、やはり余かな?ううん、いまは一応私

 余を名乗る気分じゃない...今は

 私はルナティア、今までのナレーションぽい心声、実はそれがすべて私。生まれたから12年の時は経った、今さら初めて自分の罪を気づいた

 この平和の村で田舎の小娘として生を過ごすと思った時期もあったけど、やはり自分が死んだ後の事が気になって、歴史に趣味あるとかの理由で両親にお願いをした。その結果、先に見た通り、ほどんと悲しみと罪悪感に飲まれて

「これで、少しでも私の罪を償えば...」その罪悪感を心に抱き、緩やかに目を閉じ、眠りにつくルナティア。夢に沈んだ彼女の目に映すのは、果てしなき近い、まるですぐ上空に留まる、蒼く光る大いなる円月

 自分が今、名もない祭壇の上から目を覚めた、月から降り注ぐ寒い涼風、心すら凍らせ、途轍もないリアルな触感。しかし、視線を包む幻の光が常に、そして強く自分に「今は夢」だと示している

 祭壇から起きて、周りを見れば、荒れ果てた神殿。いや、神殿に呼べない廃墟だろ。ただ幾つ白い大理石の柱が残されて

 そして見える先は果ての海オケアノス。決して伸びることのない平面の大地から虚無の宇宙へと落ちる水の奔流

「どこだ、ここは...?」

 不安だけど真相を突き止める為に祭壇から降りようとしたルナティア、右手が急に硬い何かを触った。視線をその方向に移すと、蒼い金属の表面に銀色のラインを刻んだブレスレットを見つけった。

 どうしても夢と思わない解析度と触感、まるで本物を握ったような。そして心から、あれを着けっと、そんな裏声が聞こえる。そして、心声を気づいた瞬間、ルナティアが急に目を覚めた

「あれは…誰の仕業?」自然の夢だと信じない、絶対魔法的の何かに仕掛けられたの予感、こうして警戒を続くルナティア

 自分は何者かに狙われたーー

 少々身体を動きたいと、また右腕が何かをーー何かを着いている。先、夢に見たブレスレットは今、丁度自分の右腕に着けた

「魔法使いたちの小賢しい真似をーー!」

 図られた気分になったルナティア、力を振り絞ってブレスレットを腕から抜けようにしている。しかし、何をしても無駄。まるで神力を注いだように、どうしても物理的にあのブレスレットを抜けない

 怒りの真ん中にいるルナティアの思考を中断、いや、思考を呼び戻すのは、顔に拭く冷たい夜風

 今は恐らく12時当たりの夜中、自分は今、村の裏山の山頂にいる。確かに僅か半時間ほどの道だけど、何ぜここに?夢遊ぶで解釈したら流石に奇遇すぎる。それに、言えない裏の事情もあるーーこの場所こそ元々自分が目指した目的地、旧帝国時代に創った地下格納庫、下に軍用ビークルや兵団に配った戦闘用装備とかを収納している

 自分に起きたことを知りたいが、それほど優先順位が高いことではないと判断し、格納庫の探索に戻ったルナティア

 どんな手段かわからない、だが結果オーライなら過程に気にしない、それがギルベルトだった頃の信条(その一つ)

「ラス・イール・インペリューム・カイザー」暗号を言い出し、その場に大人しく待っているルナティア。数秒後、暗号に応じて、幾つ機械の触手が地面から湧いてきた、その末端から掃射した緑色のレイザースキャンがルナティアの身体を検査ーー肉体ではなく、意識をサーチしている。

 元々敵が肉体を変わる、鍵を模造するとかの魔法を防ぐための対策だけど、まさか二千年後の今で機能するとは計算済みの意外

 元よりこうなるっと知っていた、だからここの格納庫に来た。まぁ、正直は賭けだけど、万が一ここの自動装置が正常に機能していないのなら全てが台無しだ

「意識チェック、クリア。ギルベルト皇帝陛下と確認。お帰りなさい、我らがカイザー。」

 無機質な音が触手から伝わる、そしてルナティアの目の前に地面が動く機械のように開き、下へ通じるエレベーターの丸い入口が現れた

「皮肉だな。今や皇帝なんかを耳にしても嘲笑うしか思えないーーまぁいい、そんなに心が弱い私ではない。」

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