ラスボス転生?!月の女神にTS転生した悪役皇帝、巨大ロボットと共にレコンキスタ

赤枠の竜騎士

Episode 1 死闘の果て、カイザー死す!

 蒼く光る星の上、ただいくつのデブリが静かく漂う、果てしなき宇宙空間

 たったひとりの巨大ロボットが大いなる黒き炎の巨人に立ち向かう

 白き竜の首を持つロボット、開いた口からマスク付きの面部、そして背面まで続く、赤い光が射すようなクリスタルの翼と力強く長い尻尾、胸が青いイーグルに抱かれ、両腕には灰色の狼、足に履いたのは鯨に見える青いアーマー、そして全身を繋ぐ金色のライン

「これで決着をつける!破壊の意識ダークネス・エンペラー!」

 異なる五つの声が同時に叫ぶ、ロボットから発散した銀色のオーロラが徐々と現実を書き替え、真空だった宇宙に強い思いの声が鳴り響く。ロボットは幾億の願いを束ねた白銀の剣を掲げ、炎の巨人へ仕掛けた

「現実を書き換えす如きの小技、摂理たる余に通じると思うか!」

 逃げることも隠すこともない、ただ振りかざした剣に向かって、天地揺るがす一撃で撃ち返し

 剣と炎が交わり、激しい爆発を引き起こし、両方共々撃ち分かれた

「人間は所詮人間!いや!例え女神になろうと、摂理たる余を打ち滅ぼすことなど不可能!せいぜい絶望するがいい!神皇ゴッドレスルナディア!」

 黒き炎が嘲笑う、爆発したプロミネンスのように湧き上がる炎、幾千の手の如く仕掛けてきた

「それがどうした!」と吠え叫ぶ、胸の真ん中にいるイーグルの首を通って現れた神々しく雰囲気の少女、風なくしても燃え上がったような青い髪が宙に舞う

「今こそ、全てをかける時!この身を代えても、貴様を撃つ!受けるがいい、奇跡を呼ぶ余の一撃!」

 魂の底から発する、二人の声が重なり、黒き炎さえ怯え下げた戦の咆哮と変え

 少女の左胸、確かに言えば心臓の位置に残した剣の傷痕が金色の光を放ち、僅かながらも世界ごと切り裂く不思議の力に満ちた欠片が徐々と姿を現し

「バカなーーあれは、あれはーー!」

 少女の身を纏う神々しの光が欠片に集う、やがて一つの矢に形を成す

「ハイペリオン・ドラ・グランデ!」

「応!」

 少女の声に従い、ハイペリオンと呼ばれたロボットが胸のイーグルを取り下げ、弓へと変形展開、そして少女の胸から現れた矢を構えた

「願いの一撃、今こそ届く!ーー貫け!ウィッシュアーロー!」

 金色の矢に白き願いを纏い、より大きくなる、破壊の意識を貫いた

 滅びるを司る邪神を打倒した月ノ女神ーーこのイール・エラン白の宝玉に伝わる、遥か太古の伝説

 その真実を知るために、更なる原初の彼方へと時を流し、辿り着くすべての始まりーーこれは三つの世界を交わる、生まれ変わった暴君ヒメとふたりの勇者の物語である

 ーー星暦0年ーー

 果てしなき炎、静かに燃やす

 ここは黒く金きケイオス・クリスタルの光が満ちた宮殿

 科学の力をもって、全ての魔法と信仰を打ち滅ぼす、かつてこの星イール・エラン全域をも支配した大帝国フレイティア・エフィアの都

「もう終わったよ、ギルベルト。」

 美しくて悲しい声が王宮だった廃墟に響く

 赤き髪の少女、聖王にして勇者、ミライヴィア・パンドラゴンが静かに剣を構え

 十二色の宝石に彩る、黄金の聖剣カレイド・エクサー、「開闢の鍵」の異名を持つ聖剣は今、更に輝く

 その向こう、禍々しい黒い装甲を身に纏い、半壊したヘルメットから一部の顔が晒し、紫色の光の剣を握る、ギルベルトと呼ばれた男は静かに、少女の攻撃を待つ

 獅子の咆哮と共に、聖剣からこの世に存在しない始まりの光を放ち、天を覆う闇雲諸々撃ち払う

 やがて、放たれた光が一つの玉に収縮し、男へ襲い掛かる

 手も足も出ない、動かない。まるで因果からそう書き換えされたよう、一切の諍いは無へと消す

 光の玉に押しされ、十字架に縛られたように徐々空へ

 ゆっくりと剣を掲げ。森羅万象切り裂く、始まりの聖剣。その真の力、遥かに人の領域を超え、現実すら両断する

「うおおおおお......!」

 並みの剣と変わらない大きさ、しかし、それを動かす度に、まるで幾千億トンの太陽を運ぶよう、大地が揺るがし炸裂、マグマも湧き上がり、光さえ歪める

 剣を一旦斜め後ろにかざし、力を溜めて、飛び上がり

「必殺必中!」

 円の軌跡を描く、その頂点に達した瞬間、力が解き放たれ

「エクサァァァダイナミック!!!」

 凄まじい爆発が引き起こし、ギルベルトも地上に吹き飛ばされ

 死んでいない......これでも手加減したが

「君たちの勝ちさ。余を仕留めろ。」

 まるで他人の命のように、金髪の男は軽く語る

 風前の灯火のような主の命を明かすように、身にまとう黒きローブも装甲もボロボロ

「手を…取らないか。私たちの仲間になって…前のように…」

「コぉーー」目の前にある少女を汚れないように、あえて目を逸らし、隣のとこかへ血を吐く、男は話をした

「あの時のこと、まだ忘れていないか」

 彼女たちが初めて帝都にたどり着いた頃のこと

 ギルベルトは、一介の旅人に仮装し、ミライヴィアの一行に潜り込む

 伝えない真実以外に偽りなし、皇帝たる偽装も剝ぎ取り、裸のように彼女と向き合い

 だからこそ分かる、ミライヴィアは自分よりも適切な指導者、彼女だけは、真の王に至るべき人

「残念だが、余を生かしたら、今まで死んでいた人たちはどうなる…」

 もう語ることが難しく、おのがの定めを受け入れた顔

「......下手な言い訳ね......でも分かった」

 聖剣が紙を刺すように、瞬く間に男の心臓を貫く

「この玉座、そして世界を救う、人々を導く使命、もうお前のこと」

 最後の言葉を残して、男は目を閉じた

 痛みなく最後、これはライバルとしたミライヴィアが今、唯一できること

 皇帝カイザーギルベルト13世、ここに死す

 体から意識が遠ざく、何もかも虚無に飲み込まれ......

 っが、その刻

 幻のようにか、虚ろなる灰色の空間の中、まるでテレビを見るように

 ギルベルトは見た、自分を倒したその先、ミライヴィアたちの冒険、その物語の結末

 赤髪の少女と天の彼方からやって来る白き天竜アーゼリス・ニルフィオンとの戦い

 屍と剣に満ちたイクサバ、赤き真龍と黄金の獅子と白銀のワイバーンが合体し、機械仕掛けの巨神「ジ・アルビオンド・グランデ」が生まれ、戦って

 そして巨神に向かって、アーゼリスが放たれた天地開闢の一撃

 惑星周囲77光年内のすべての大気を圧縮し、たった一つの槍になり

神滅の槍ガン・ギルス

 白き光を放つ槍と黄金の剣とぶつがり合う時、天が裂く、地が割る、ビックパンにも匹敵する天地鳴動の衝撃を生み出した。

 その衝撃は生死の狭間をも超え、ギルベルトの意識を未知のどこかへと吹っ飛ばす

 ただの残留思念かもしれぬこの意識、再び目覚めた時はもう…

 --星暦1768年--

「ぎゃぎゃーー」

 赤ん坊の泣き声と共に、ギルベルトは意識を取り戻した

【生き返した…?こんな事、あるはずがないのに…】

 ギルベルトは思った

 この世界に魂なき

 ああ、そう、そういう世界なんだ

 神はない、魂もない

 残酷けど真実

 いや、神と呼ばれる高次元生命体はあっただろうか、今から幾万年前の神話の時代で、この地上を奪い合い、ただ無限の戦火と悲しみを広がる

 そんなのただの邪神、だから倒された

 幼い頃、帝国中枢の図書館で読んだ古き真実が、ずっとギルベルトを支えてきた

 神話の時代が遠ざかる、神への信仰は再び暗き世界へと戻し

 戦乱に迷う愚者どもは勝手に星に眠る星命力ステランナを使い、魔法という現実ごと書き換えす奇跡を呼び起こす

 無知、愚信、混乱に満ちた時代

 それがギルベルトが生きた時代

 だからこそ、帝国を広がるじゃないか

 イール・エランの中枢たる超大陸テトラニアを一掃し、海の向こうの孤島ヴィジュアの征服を図ろうと、唯一の敵が現した

 4人の勇者と12体機械仕掛けの騎士を率いる赤髪の少女、ミライヴィア・パンドラゴン

 どこかの軍閥の娘だと聞いて、ヴィジュアを一統し、かの暗い時代に相応しくない光を纏う若きヒメ

 勇気、正義、闘志

 未来への希望

 忘れかけた意志を示し、民を導く

 二つの意志がぶっつがり合う時、強い方、正しい方が勝つのが定め

 あやつに負けたことに悔いはない

【余よりいい指導者になるだろ】

 っと思ったが

 さすがに自分に起きた異常イレギュラーを見過ごせない

 知的生物の意識は所詮宇宙の片割れ、零れ落ちた世界の意識のわずかの欠片

 量子と磁場で動く意識は、生体機能が停止した後、すぐに消え去る…はず

 あの剣のことが、開闢の鍵だから生み出した奇跡

 あるいは、私はたっだギルベルトという意識のデータを取り込んだ、たっだの赤ん坊か

 なんという非科学的なことをーー

 思考に専念し過ぎたのよう、この子も泣くことを止めた

 ギルベルト本人に対して、当たり前というか慣れたことだけど、隣の大人にとって、大変な事態

 本能か何か、大人の手に触れた瞬間、この赤ん坊が再び泣き始めた

「良かった、無事て......」

【…】

 目の前にいるこの地味な黒髪の男、親切で心配そうな顔でこちらに向かって

 親…か?こんなのも、悪くないかも

 ギルベルトという枷を置いといて、普通の人生を楽しもう

 っと思ったら、目の前の男は何も考えずにきゅうーっとした

 正直、ひげはいやだけど、これは…まぁ…

「あなた、この子だら、何の名前がいいかしら」

 彼を抱いた婦人は愛らしいそうな口調で

「珍しいねぇ、この水青色の髪。何故か月を思い出す......そうだ、ルナディアだ。この子はルナディア!」

「いいね、可愛い名前。ルナちゃん将来はきっと、綺麗なレディになる。」

 何か、変な言葉出てない?

 はぁ......?

 鏡に向かった瞬間、ギルベルトの息がとめた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る