質す
鈴木の言動におかしなところがあった。
鈴木は確かに彼女のことが好きなのだろう。そう思う。しかし、これを確信に持っていこうとすると、必ず鈴木の言動の奇異に邪魔をされる。いや、邪魔をされるというかその奇異を考慮に入れると、事態が蜃気楼の様に私を撹乱してくるのだ。目に見えている筈のものがそこに無い。無い筈のものが目に見えている。そんな感じがする。
彼はいつも暇さえあれば、私と彼女に接点を持たせようとした。席替えの時だってそうだし、この間は例の四人で出掛けようという約束をした。約束をしただけならまだ私も疑わないが、その日、鈴木と伊藤さんは風邪だか何だかで、どちらも欠席した。そして結局帰るに帰れないからその日は彼女と二人で遊んだ。そんなことがあと一二回続いた。私は流石におかしいと思って二人で会った時、鈴木を問い質した。
「最近、約束全然守ってくれないじゃん、何で?」
「約束?」
「遊ぼって言ってんのお前なのに全然来ないじゃん」
「……あー」
「ん?」
「…そういやそうだな」
「いや、そういやじゃなくて、そうじゃん」
「まあ、何というか……お前、倉橋のこと…、好きじゃん?だから俺はお前と倉橋が二人きりになるようにしてるだけよ。他意は無い」
自分が正しければそれでいい、そんな空気感が漂っていた。いつもの私なら黙ってその様子を見届けていたかもしれない。しかし、この時は違った。珍しく私は意見をした。自分でも不思議に思う。でもそれだけ、鈴木と言う存在が無視できなくなっているのだと感じた。
「いや、それおかしいって」
「おかしいって?」
「…何というか、僕そんなこと頼んでないし…、それに第一倉橋さんのこと好きとかまだ何かわかんないし…」
「それはお前は好きだよ。倉橋のこと」
「……鈴木はどうなんだよ」
「え?」
「お前、倉橋さんのこと好きだよな」
「好きじゃない」
「誤魔化すな?」
「好きじゃない」
「正直に」
「だから好きじゃないって」
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