第1話 Taikensakuの世界へ

 幸運なことに、唯と遥のいる東京第八高校の25畳の図書室に新しいパソコンが支給されることになった。図書室とはいっても、本を何十冊か並べて、机を1つ置いただけだから、学生は平均一冊も借りられない。

 パソコンの裏を見て、遥は驚喜の叫び声を上げた。ステッカーに印字されている文字は間違い無くこう読めた——「ゆうパソコン社」


 ということは、だ。Taikensakuが利用できるのである。図書室のパソコンで調べ物をするのは黙認されているのだ。

「Taikensaku 無料版」で調べると10数件ヒットした。その中から正規のサイトを探し出す。「Haruka」アカウントを作って、早速使ってみる——。


      *


 遥は歴史が苦手だった。豊臣秀吉とペリーとザビエルがごっちゃになるのである。


      *


 Taikensakuに打ち込む文字はこう決めた。「豊臣秀吉 山崎の戦い 真相」

 36件ヒットした。遥がその中から目ぼしいサイトをクリックすると、もう図書室から遥が消えていた——さっきまで遥が座っていた図書室の円い動く椅子が小さく揺れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る