北欧編 第6章:迫り来る終焉の影

1.帰還


カール・オルセンは疲れ切った身体で空軍基地に戻ってきた。彼のF-35は激しい戦闘の痕跡を残し、煙を上げながら地面に降り立った。格納庫の扉がゆっくりと開き、整備士たちが駆け寄ってくるが、カールは疲労のために足元がふらつき、かろうじてコックピットから降りると、地面に片膝をついた。


「中尉、大丈夫ですか?」


整備士の一人が駆け寄って声をかけたが、カールは軽く手を振って大丈夫だと示した。彼は深呼吸をしてから立ち上がり、基地の司令部へと向かった。


2.基地での会議


司令部に入ると、緊張した空気が漂っていた。幾人かの高官たちが作戦室に集まり、机の上には世界地図が広げられている。ノルウェー全土における戦況が一目でわかるようにマークが施され、フィヨルド地帯を中心にスルトの進行ルートが示されていた。


カールが部屋に入ると、全員の視線が彼に向けられた。彼はその重圧に押されることなく、自分の経験を報告するために前へ進み出た。


「スルトの残りの片腕は液体窒素兵器によって凍結し、その後、通常兵器で破壊することに成功しました。しかし、スルトの力は未だ衰えておらず、我々は多大な損害を受けました。」


彼の言葉に、部屋の中は静まり返った。高官の一人が唇を噛みしめながら言った。


「そうか…それでも奴は倒れなかったか。」


「残された時間は多くありません」と、カールは続けた。「スルトは必ず再び動き出し、次の攻撃を仕掛けてくるでしょう。その時に我々がどれだけ対応できるかが、今後の運命を左右します。」


「核の使用を検討する時が来たのかもしれない…」


司令部の一角から低い声が聞こえた。全員がその発言に対して緊張感を増した。核兵器を使用することは最後の手段であり、その決断は世界に計り知れない影響を及ぼすだろう。


「しかし、核の使用にはリスクが大きすぎます!」と別の将官が反論した。「スルトが倒れる前に、我々の土地が焼き尽くされるかもしれない。それに、ノルウェー全土、そして周辺諸国に与える被害は計り知れない。」


「では他にどんな手があると言うのだ!」もう一人の将官が声を荒げた。「液体窒素兵器で両腕を失わせることができたが、完全に倒すにはそれ以上の力が必要だ。」


議論は激化し、司令部内の緊張はピークに達した。カールはそのやり取りを黙って聞いていたが、ふと、自分が操縦してきたF-35に目を向けた。彼は再び自分の意志を固めた。自分にはまだできることがある――それを実行するために、彼は今ここにいるのだと。


3.最後の準備


カールは司令部を後にし、再び格納庫へと戻った。彼のF-35はすでに修理が始められており、整備士たちが汗を流しながら作業に没頭していた。


「機体はどうだ?」カールが整備士に声をかけると、彼は顔を上げて答えた。


「もう少し時間が必要ですが、問題なく飛べるようにはなります。ただし、限界まで酷使されていますので、持つかどうか…」


「持つさ」とカールは微笑んだ。「俺が乗っている限り、きっと大丈夫だ。」


整備士達はその言葉に力を得たように作業を続けた。カールはしばらく彼らの様子を見守っていたが、やがて自分の機体の傍に立ち、再び出撃の準備を始めた。


彼の頭の中には、次なる戦闘のシナリオがすでに描かれていた。スルトを倒すための最後の戦いが近づいている。それが勝利に繋がるか、それとも悲劇に終わるかは、まだ誰にもわからない。


だがカールは、今度こそスルトを倒す覚悟を持っていた。どんな犠牲を払ってでも、世界を救うために戦う。それが、彼の使命であり、今まで培ってきた全ての力を賭けた最後の戦いであった。

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