北欧編 第7章:最終決戦

1.最後の出撃


空は灰色の雲に覆われ、冷たい風が吹きすさぶ中、ノルウェーの空軍基地は不穏な静けさに包まれていた。カール・オルセン中尉はF-35のコックピットに座り、最後のチェックを行っていた。彼の頭の中には、司令部での議論とこれから始まる戦闘が交錯していた。


「全システム、正常稼働。武装も問題なし。」


彼は整備士からの最終報告を受け取り、軽く頷いた。これが最後の戦いになるかもしれない――そう思いながらも、カールは決意を固めた。自分がやらなければならない。それが、今の自分にできる唯一のことだ。


管制塔からのクリアランスが降り、エンジンが唸りを上げた。F-35は滑走路を滑るように進み、カールは両手を操縦桿にしっかりと握りしめた。彼の目には、これから迎える運命の瞬間が見えていた。


「カール・オルセン、出撃します。」


彼の声が無線を通じて響き渡り、F-35は滑走路を離れ、空高く舞い上がった。空軍基地のスタッフ達は、その姿を見送りながら祈るような気持ちで彼を見つめていた。


2.スルトとの再戦


数時間後、カールのF-35はスルトが進行しているエリアに到達した。彼は周囲を確認しながら、仲間のパイロット達と無線で連携を取り続けた。核兵器使用の是非が議論されている間にも、スルトは確実に進軍を続けていた。


「敵影を確認…スルトだ。」


カールの目に、遠くの地平線上に巨大な影が映し出された。それは両腕を失ったとはいえ、なおも強大な力を誇るスルトだった。彼の一歩一歩が大地を揺るがし、進む先には焼け野原が広がっていた。


「全機、攻撃態勢に入れ!」


カールの命令とともに、空軍部隊が一斉にスルトへと突撃した。ミサイルが放たれ、スルトの周囲に爆発が広がる。だが、スルトはその攻撃をものともせず、炎の息を吐き応戦してきた。


「やはり、核兵器しか手がないのか…」


カールはそう思いながらも、今は目の前の戦いに集中するしかなかった。彼のF-35はスルトの頭上を旋回し、正確なタイミングで爆撃を加え続けた。液体窒素兵器によってスルトの腕の破壊に成功したが、それは彼らにとっても奇跡に近い出来事だった。


3.最後の望み


戦闘は熾烈を極めた。カールと彼の仲間達はスルトの猛攻に必死で応戦し続けたが、スルトの圧倒的な力に次第に追い詰められていった。無線からは次々と仲間の悲鳴が聞こえ、爆発音が空に響き渡る。


「全員、退避しろ! ここからは俺が…」


カールは無線で仲間たちに命じた。だが、その言葉を最後に、彼の無線は沈黙した。


彼はスルトの背後に回り込み、最後のミサイルを準備していた。これが成功するかどうかは分からない。しかし、彼にはもう選択肢が残されていなかった。スルトを倒すためには、すべてを賭けるしかない。


「頼む…これが最後だ…」


彼は深く息を吸い込み、ミサイルの発射ボタンを押した。その瞬間、F-35は急上昇し、スルトの頭上から突き進むミサイルが炸裂した。


巨大な爆発がスルトを包み込み、轟音が空を引き裂いた。カールはその光景を見つめながら、ゆっくりと息を吐いた。彼の目には、すべてが一瞬にして消え去ったように見えた。


だが、煙が晴れると、スルトはまだ立っていた。両腕を失っている巨人は、炎の息で最後の反撃を試みていた。


「これで終わりか…?」


カールは機体を旋回させながら、スルトが崩れ落ちる瞬間を待っていた。彼のF-35はすでに限界を超えており、エンジンは激しく震えていた。


しかし、彼が見つめる中、スルトはゆっくりとその膝をつき、ついに地面に崩れ落ちた。その姿を見て、カールは深い安堵の息を漏らした。


「終わった…」


だが、その瞬間、彼の機体は大きな衝撃に襲われた。スルトは最後の抵抗として咆哮をあげ、その衝撃波によりF-35はコントロールを失い急降下を始めた。


「くそっ…!」


カールは必死に操縦桿を引き、機体を持ち直そうと試みたが、機体は応答しなかった。彼はパラシュートを準備し、最後の手段として脱出を試みた。


そして、彼のF-35は地面に激突する寸前で、カールは機体から飛び出し、空高く舞い上がった。彼の目には、遠くにスルトが倒れたままの姿が映っていた。


パラシュートが開き、カールはゆっくりと降下していった。彼の耳には、遠くから聞こえる仲間達の声が微かに聞こえていた。


4.勝利の代償


カールは地面に着地すると、すぐに周囲を確認した。仲間達が彼の元に駆け寄り、無事を確認するために声をかけた。


「生きてるか、カール?」


彼は息を切らしながら頷いた。「ああ…何とか、な。」


その言葉に、仲間たちは安堵の表情を浮かべた。だが、彼らの目の前には、無残にも崩れ落ちたスルトの巨大な身体が横たわっていた。勝利はしたが、その代償はあまりにも大きかった。


「これで、本当に終わったのか…?」


カールは疲れ果てた身体を地面に横たえながら、遠くに広がる荒廃した風景を見つめていた。彼の心には、まだ戦いが終わったという実感が湧かなかった。


しかし、スルトが倒れた今、彼らには新たな未来が待っている。カールはそれを信じながら、静かに目を閉じた。

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