北欧編 第5章:運命の空中戦

1.開戦


カール・オルセンのF-35は、空を切り裂くようにしてフィヨルドの上空に差し掛かった。冷たい北風が吹き荒れる中、彼の目はスルトが進行する地点を捉えた。巨大な炎の巨人は片腕を失いながらも、なおも圧倒的な存在感を放っていた。彼の進む先に、残る全てを焼き尽くそうとする意志が感じられる。


「カール、目標を確認した。これより攻撃を開始せよ。」


無線から部隊指揮官の声が届いた。カールは息を整え、照準をスルトに定めた。特別な液体窒素ミサイルが、彼の機体の翼下で静かに揺れている。


「了解、こちらオルセン。攻撃を開始する。」


彼は慎重にミサイルの発射ボタンに指をかけた。全ての計器が正常に動作していることを確認すると、彼は深呼吸を一つし、決意を固めた。


「さあ、これが最後の一撃だ。」


カールはボタンを押し込んだ。次の瞬間、ミサイルは轟音と共に発射され、青空を切り裂いてスルトの元へと向かった。周囲の戦闘機も一斉に攻撃を開始し、ミサイルの軌跡がいくつも描かれる。


2.液体窒素の凍結攻撃


液体窒素ミサイルは、まるで凍てつく風そのもののようにスルトの巨大な身体に命中した。片腕を失ったその巨体は、瞬く間に凍結が進行し、強力な氷の鎧が形成されていく。スルトの炎の力は、液体窒素によって一時的に封じ込められ、その動きが鈍くなった。


「命中確認!スルトの残りの腕が凍結された!」


管制塔からの歓声が聞こえる。しかし、カールは気を緩めなかった。スルトはすでに片腕を失っているが、その巨体は依然として脅威的だ。


「次は通常兵器で腕を破壊するんだ!」


無線で指揮官が叫んだ。その合図と共に、戦闘機は通常のミサイルを発射し、スルトの凍結された腕に集中砲火を浴びせた。轟音と共に、巨大な氷の塊が砕け散り、スルトの腕が粉々に砕かれる。


両腕を失ったスルトは苦痛の叫びを上げ、その巨体が揺らいだ。しかし、倒れることはなく、逆にその怒りを増したかのように残る両足で地面を打ち鳴らした。フィヨルド全体が震え、衝撃波が広がる。


3.カールの戦いと生存


激しい揺れがカールのF-35を揺さぶった。計器が乱れ、警告音が鳴り響く中、彼は必死に機体を立て直そうとする。


「耐えろ…まだ終わっていない!」


カールは機体を制御し、再びスルトに向けて機首を向けた。だが、同僚の戦闘機が次々と撃墜されていくのが見えた。スルトの攻撃がますます激しさを増し、彼らの隊は壊滅的な打撃を受けていた。


「オルセン中尉、退避を!」


無線からの指示が聞こえたが、カールはすぐには従わなかった。彼はスルトの動きを見つめ、次の一手を考えていた。しかし、その瞬間、スルトの吐く炎が彼の機体を掠め、激しい爆発音が響いた。


「くそっ!」


カールは機体の操縦を何とか保ちつつ、戦闘空域からの離脱を決意した。彼の戦闘機は損傷を受けていたが、奇跡的に操縦はまだ可能だった。残り少ない燃料と修理不可能な状態の機体で、彼は必死に基地へと戻るルートを取った。


「オルセン中尉、よく生き残ったな。急いで基地に戻れ。」


管制塔からの声に、カールは軽く頷いた。彼は生還を果たしたが、仲間達を失った痛みと、スルトが未だに健在であることが、彼の胸を締め付けた。


4.次なるステップ


基地に戻ったカールは、機体から降りると、その場に立ち尽くした。体中が疲労に満ちていたが、彼にはまだやるべきことが残っていた。


「まだ終わってない…」


カールは自らに言い聞かせた。スルトとの戦いは続いている。彼らには時間がない。スルトが再び動き出せば、次こそは世界が終焉を迎えるかもしれない。


彼は、次なる作戦を成功させるために、自分の全てを賭ける覚悟を新たにした。

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