北欧編 第1章:終末の始まり
1.イラン革命防衛隊 - アリ・レザの視点
アリ・レザは、イラン革命防衛隊の精鋭部隊に所属するベテラン兵士だった。彼は幼少期に戦争の悲惨さを目の当たりにして育ち、いつしか自らも国を守る盾となることを決意した。家族は彼の支えであり、戦場から帰るたびに妻と子供達が迎えてくれるのを心の糧にしていた。戦場では冷静で厳しい指揮官であり、仲間達からは絶対的な信頼を寄せられていたが、家庭では優しい夫であり父親でもあった。
今回の任務はこれまでの戦いとは異なっていた。スルトと呼ばれる炎の巨人が中東に現れ、町を焼き尽くしていた。アリ達の任務はこの脅威を食い止めることだったが、誰もその存在を信じることができなかった。巨人などという非現実的なものが実在するとは思いもよらなかったのだ。
2.スルトとの対峙
砂漠の空は炎に染まり、地平線の彼方にはスルトの影がぼんやりと浮かび上がっていた。アリは双眼鏡を手に取り、その姿を確認する。巨大なシルエットは確かに存在し、炎の剣を持つその姿はまさに伝説の巨人そのものであった。彼の胸の中に、不安と恐怖が入り混じる。しかし、部下達の前でその動揺を見せるわけにはいかなかった。
「全員、準備はいいか?」アリは部隊に向けて声をかけた。彼の声には決意がこもっており、兵士達はそれに応じてうなずいた。誰もが死を覚悟していたが、誰もそれを口にしなかった。彼らの顔には緊張が浮かんでいたが、同時に国を守るという使命感がその目に宿っていた。
アリは無線で命令を下した。「前進。目標を確認次第、集中砲火を浴びせろ。撤退の指示があるまでは絶対に後退するな!」
戦車が砂漠を進み、装甲車がその後に続く。対空ミサイルが準備され、兵士達は地上からの攻撃に備えた。アリはその光景を見つめながら、胸の中で祈るように呟いた。「神よ、我々に力をお与えください…」
3.スルトとの戦闘
そして、ついに戦闘が始まった。戦車の砲弾が轟音と共に発射され、ミサイルが空を切り裂いてスルトに向かって飛んでいく。だが、スルトはまるで何も感じていないかのように、その場に立ち続けた。彼の巨体は炎に包まれ、その剣はまるで神々の怒りを具現化したかのように輝いていた。
「もっと集中させろ!」アリは無線で叫び、部隊にさらなる攻撃を命じた。戦車からの連続砲撃が続き、空中で爆発するミサイルの音が響き渡る。しかし、スルトは微動だにせず、ゆっくりと彼らに近づいてきた。
「全員、装甲車の後ろに退避しろ!防御陣形を取れ!」アリは部下達に指示を出し、自らも装甲車の陰に身を潜めた。しかし、スルトの力は計り知れず、その一撃で大地が揺れ、彼の部下達は次々と倒れていった。
巨大な剣が地面に突き刺さり、爆風が砂漠を駆け抜けた。装甲車が吹き飛ばされ、兵士達は宙に舞った。アリはその光景を目の当たりにし、絶望的な状況を理解した。
「こんなものが…相手になるのか…」彼は思わず呟いたが、すぐにその言葉を飲み込んだ。彼にはまだ、やるべきことが残っていた。逃げることは許されない。アリは最後まで戦うことを決意し、残った弾薬を手に取った。
4.アリの最期
アリの体は傷だらけで、呼吸は荒くなっていた。部下達は次々と倒れ、彼一人がその場に残されていた。スルトは彼に向かってゆっくりと近づいてきた。彼の心には家族の顔が浮かび、愛する妻と子供達が脳裏をよぎった。
「もうすぐ帰る…待っていてくれ…」そう呟きながら、アリはスルトに向かって最後の攻撃を試みた。しかし、その攻撃も虚しく、スルトは無傷で彼の前に立ちはだかった。
アリは膝をつき、最後の力を振り絞って銃を構えた。だが、その瞬間、スルトの剣が彼を貫き、彼の体は炎に包まれた。
「神よ…どうか、家族を…守ってください…」それが彼の最期の言葉だった。アリ・レザはスルトの前で命を落とし、彼の魂は永遠の安息へと向かった。
炎の中で、彼の遺体はゆっくりと消えていったが、彼の勇気と献身は仲間達の心に永遠に刻まれた。
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