太平洋編 第1章:ヨルムンガンドの出現

1: 獣の目覚め


アメリカ西海岸、普段は賑わいに満ちたこの地に、想像を超える悪夢が訪れようとしていた。カリフォルニアの夜明けが訪れるとともに、地面が激しく揺れ始め、建物が震え、車がひっくり返る。普段は穏やかな太平洋が荒れ狂い、巨大な波が岸に打ち寄せた。


その時、海の深淵から巨大な姿が現れた。北欧神話に伝わる世界蛇、ヨルムンガンドが浮上し、その鱗は朝日に照らされて鋼のように輝いていた。蛇の体は無限に続くかのように巻き上がり、巨大な頭をもたげ、その目には邪悪な光が宿っていた。


ロサンゼルスの街に最初の咆哮が響き渡った瞬間、恐怖が広がった。その咆哮は地球の基盤を揺るがすような深く、喉を震わせるような音だった。一瞬にして街は混乱に陥り、高層ビルは揺れ、恐怖に駆られた市民が四方八方に逃げ出した。


2: 初期の交戦


数分のうちに、アメリカ軍が動員された。近隣の基地から戦闘機がスクランブル発進し、西海岸沿いに配備された海軍艦艇が出撃を命じられた。経験豊富な空軍パイロット、ジャック・レイノルズ大尉もその命令を受けた。F-22ラプターに乗り込むと、彼はこの任務がただ事ではないと直感した。


「全ユニットへ、こちら司令部。目標は未知の巨大敵性存在だ。慎重に対処せよ。」


編隊が接近するにつれ、蛇の巨大さが明らかになった。ヨルムンガンドの体は何マイルにもわたり、その尾はまだ太平洋に沈んだまま、頭は海岸線を見下ろしていた。近隣の艦艇に搭載された対空砲が火を吹いたが、弾丸は蛇の強固な鱗を跳ね返すばかりだった。


「空対地ミサイルに切り替えろ」とジャックは命令し、その声には恐怖が滲んでいなかった。


F-22が低空飛行を行い、蛇の頭に向けてミサイルの雨を降らせた。爆発が空を明るく染めたが、煙が晴れると蛇は無傷で現れた。巨大な尾を一振りすると、津波が岸に押し寄せ、複数の艦艇が転覆し、水面に衝撃波が広がった。


「なんて野郎だ」とジャックは呟いた。「あの野郎、傷一つついてない!」


蛇は予想を超える猛威で反撃してきた。頭を後ろに引き、毒の霧を放った。その霧は戦闘機を包み込み、金属と肉を瞬く間に腐食させた。パイロット達の悲鳴が響き渡り、彼らの機体は空中で崩壊した。ジャックは辛うじて毒霧を避け、急上昇しながら周囲の地獄絵図を目撃した。


3: 生存をかけた戦い


ヨルムンガンドが内陸に進むにつれ、その巨大な体が全てを押し潰していった。戦車や装甲車が迎撃に出たが、その砲撃はまるで効果がなかった。蛇の進撃は止まることを知らず、進むたびにさらなる破壊をもたらした。ロサンゼルスの街は今や戦場と化し、急速に廃墟と化していた。


ジャック・レイノルズ大尉と残った戦闘機は再集結し、必死に新たな戦略を模索していた。「この化け物は無敵だ」と一人のパイロットが震える声で言った。


ジャックの頭の中はフル回転していた。通常の戦術では通用しない。もっと強力な、蛇の鱗を貫くような何かが必要だった。しかし、それが何なのか分からなかった。


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