インド編 最終章:影の巨兵

1.最後の戦い


アルジュンの指揮の下、インド陸軍の部隊が再編成され、ナグルファルから現れた黒い影に立ち向かう準備を整えた。彼らはこれまでの戦いで消耗しきっていたが、ラフルの犠牲を無駄にしないという決意が兵士達の心に新たな力を与えていた。


「全員、気を引き締めろ!あの影が何者であろうと、俺達は負けるわけにはいかない!」


アルジュンは無線を通じて全軍に声をかけた。彼の言葉は兵士達に勇気を与え、戦場には再び闘志がみなぎり始めた。


黒い影は、ムスペルやアンデッドの脅威を遥かに超える存在だった。それはまるで漆黒の霧が凝縮されたような姿をしており、近づく者すべてを飲み込んでしまうような圧倒的な威圧感を放っていた。アルジュンはその影の動きを注意深く観察しながら、突撃のタイミングを見極めていた。


「狙いを定めろ…まだだ…まだ…」


アルジュンは冷静に指示を出し、兵士達に無駄な動きをしないよう命じた。ナグルファルの残骸が放つ異常なエネルギーが影に供給されているのは明らかだった。まずはその供給源を断たなければ、影を倒すことは不可能だと感じていた。


「アルジュン、こちらは工兵隊だ。ナグルファルの残骸に爆薬を設置する準備が整った。」


無線で工兵隊からの報告が届いた。アルジュンはそれを聞き、すぐに作戦を決断した。


「よし、全員、爆破のタイミングに合わせて一斉攻撃を仕掛けるぞ。敵の動きを止めるためには、一瞬の隙も見逃すな!」


アルジュンは無線で部隊に指示を出し、影への総攻撃を命じた。兵士達は全力で武器を構え、一斉に火を噴いた。重機関銃、ロケットランチャー、自爆型ドローンが一斉に影に向かって放たれ、その一瞬の攻撃は戦場を炎と爆風で包んだ。


しかし、影はその攻撃をまるで霧を裂くように受け流し、逆に攻撃を仕掛けてきた。無数の触手のような黒いエネルギーが兵士たちに向かって伸び、彼らを次々と飲み込んでいく。アルジュンはその光景を見て、危機感を募らせた。


「工兵隊、今だ!爆破しろ!」


アルジュンの合図とともに、工兵隊がナグルファルの残骸に仕掛けた爆薬を一斉に起爆した。爆発は凄まじい音とともに響き渡り、ナグルファルの残骸は大きく揺れ動いた。その瞬間、影が大きく後退し、エネルギーの供給が途切れたかのようにその勢いを失った。


「今だ、総攻撃を仕掛けろ!」


アルジュンは絶好の機会を逃さず、全軍に突撃命令を下した。兵士たちは一斉に影に向かって突撃し、最後の力を振り絞って攻撃を仕掛けた。影はその攻撃に抗うように再び動き出したが、供給源を断たれた今、その力は徐々に弱まっていた。


「これが最後だ…!」


アルジュンは叫びながら、ナグルファルの残骸を目指して突撃した。彼は影を退け、その中枢を打ち砕くために全力を尽くした。ついに、影は大きく崩れ落ち、消滅していった。ナグルファルの残骸も同時に崩壊し、戦場に再び静寂が訪れた。


「ラフル…俺達はやったぞ…」


アルジュンは空を見上げ、兄の名を心の中でつぶやいた。彼の心には、戦友達の犠牲と共にラフルとの絆が深く刻まれていた。


だが、まだ戦いは終わっていない。ラグナロクの終焉は、これからが本番だという事をアルジュンは痛感していた。













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