中国編 第3章:絶望と希望の狭間

1.死闘の始まり


巨大ガルムが地面に降り立つと、その圧倒的な存在感が辺り一面に広がり、兵士達の間に恐怖が蔓延した。その巨体はまさに神話の怪物に相応しく、背後に控えるガルムの群れも、彼に従うかのようにその動きを止めていた。


リ・ウェイは息を飲み、視線を巨大ガルムから離せなかった。その瞬間、彼の中で何かが決裂したように感じた。恐怖が勇気に変わり、彼の心にはただ一つの使命が刻まれた。それは、仲間達と家族を守る事だった。


「これ以上、奴らに自由を与えてはいけない!」ウェイは叫び、ZTZ-99戦車に乗り込むと、巨大ガルムの方向へ砲塔を向けた。「目標、巨大ガルム!全員、攻撃開始!」


戦車から放たれた砲弾が次々と巨大ガルムに命中するが、その厚い皮膚は簡単には傷つかなかった。それでも、ウェイと仲間達は連携を取りながら攻撃を続けた。上空ではJ-20戦闘機が爆撃を繰り返し、地上からは歩兵部隊が対戦車ミサイルを放つ。しかし、巨大ガルムはその巨大な体で、兵器の猛攻をまるで無視するかのように耐え続けていた。


2.敗北の予感


戦況は刻々と悪化していた。ガルムの群れが再び動き出し、兵士たちの陣形を崩し始めた。ウェイは戦車の中から、その光景を目の当たりにし、焦燥感が募る。次々と倒れていく仲間達を見ながら、彼は無力感に襲われた。


「このままでは全滅してしまう…」ウェイは自分の心の中で叫んだが、同時に諦めるわけにはいかないという強い意志も感じていた。彼には守るべき家族があり、仲間達もまた、それぞれに大切な人がいる。この戦いを諦めることは、彼らすべての未来を捨てることを意味していた。


「まだ終わりじゃない!」ウェイは自分に言い聞かせ、最後の一撃を放つために戦車の砲身を再度巨大ガルムに向けた。しかし、その瞬間、巨大ガルムが口を開き、凄まじい咆哮を放った。衝撃波が周囲の兵器や建物を破壊し、ウェイの乗る戦車もまた、衝撃で横転した。


ウェイは車内で意識を失いかけながら、遠のいていく意識の中で、家族の笑顔を思い浮かべた。「ファン…シアン…」彼の心は、ただ彼女たちを守りたい一心で満たされていた。


3.希望の光と幻覚


気がつくと、ウェイは戦車の外に放り出されていた。身体は痛みと傷で満ちていたが、彼は必死に立ち上がり、辺りを見回した。彼の視界に映ったのは、荒廃した戦場と、その中で生き残っているわずかな仲間達の姿だった。


その時、ウェイは突然、空に光が差し込むのを感じた。彼はその光の方向に目を向け、そこに立っている一人の人物に気づいた。それは、人民解放軍の伝説的な指導者であり、ウェイがかつて尊敬してやまなかった将軍だった。


「リ・ウェイ、まだ戦えるか?」その声は穏やかでありながら、決して諦めない強さを持っていた。ウェイは驚きながらも、その声に力を得て、再び戦場に立つ決意をした。


だが、次の瞬間、ウェイは目をこすり、将軍の姿が揺らめくのを感じた。彼は理解した。これは現実ではなく、疲労と絶望から生じた幻覚だということを。


「幻覚…か…」ウェイはかすれた声で自嘲しながらも、なぜかその幻覚に励まされている自分を感じた。「そうか、まだ戦える…」


ウェイは幻覚が消えた後も、その言葉を胸に刻み、再び戦いに挑む決意を固めた。彼の心には、新たな希望が灯っていた。


4.最後の反撃


ウェイは新たな作戦を練り、仲間達と連携し、ガルムの群れを一箇所に誘導する為に奮闘した。戦場は再び激しい戦闘の渦に巻き込まれた。ウェイと仲間達は、巨大ガルムの注意を引きつけながら、周囲のガルムを次々に倒していった。


ついに、ガルムの群れが一箇所に集まった瞬間、ウェイは無線で「今だ!」と叫び、全力で攻撃を開始した。J-20戦闘機が空から精密爆撃を行い、地上の部隊が一斉に火力を集中させた。閃光と爆風がガルム達を飲み込み、その勢いに巨大ガルムもついに耐えきれなくなり、巨体が崩れ落ちた。


「やったか…?」ウェイは息を切らしながら、目の前の光景を見つめた。巨大ガルムが動かなくなった事を確認すると、彼は安堵の息を吐いた。しかし、その時、巨大ガルムの体が最後の咆哮を上げ、彼を吹き飛ばした。


ウェイは地面に叩きつけられ、再び意識が遠のいていった。だが、彼の心には、仲間達が勝利を収めたという確信が残っていた。


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