中国編 第2章:ガルムの影

1.最初の遭遇


リ・ウェイの部隊が配置されたのは、砂漠と都市の境界に位置する戦略拠点だった。そこは古くから軍事的に重要視されてきた場所であり、人民解放軍の一部隊が常駐していた。しかし、この場所が「古代神話の怪物」との最前線になるとは、誰も予想していなかった。


ウェイ達が到着して間もなく、夜空に不気味な咆哮が響き渡った。その音は、獣のようでありながら、人間の声のようでもあり、兵士たちの背筋を凍らせた。夜の闇の中、彼らはその正体を確認するために、持てる限りの照明装置を起動させた。だが、砂嵐と遠くでうごめく影が、彼らの視界を阻んでいた。


突然、周囲に異常な寒気が走り、隊員の一人が「あれを見ろ!」と叫んだ。ウェイがその指示に従い双眼鏡を覗くと、遠くの砂丘の上に立つ複数の影が見えた。彼らはまるで軍隊のように整然と並び、徐々にこちらに向かってくる。


それは、まるで巨大な狼のような姿をしたガルムの群れだった。その数は数十匹に及び、闇の中で光る赤い目が、不気味に彼らを見下ろしていた。


2.戦闘開始


「敵襲!全員、戦闘準備!」ウェイの上官が指示を飛ばすと、部隊は迅速に陣形を整え、ガルムの群れを迎え撃つ準備を始めた。ZTZ-99戦車が砲身をガルムの方向に向け、対空砲や機関銃が一斉に火を吹く。


だが、ガルム達は通常の狼とは違っていた。弾丸や砲弾が彼らに命中しても、その勢いを殺すことはできず、さらに激しく咆哮しながら突進してくる。ウェイは、まさに生きた兵器のように戦うガルム達に圧倒されながらも、指示を出し続けた。


「J-20を呼び出せ!」上官が叫び、すぐに空軍の援軍が要請された。戦闘機が空を切り裂き、地上にいるガルム達を狙って精密爆撃を開始した。閃光と爆風があたり一面を包み込み、ガルムの群れは一時的に動きを止めたかのように見えた。


だが、それも束の間。爆風の中から再び立ち上がるガルム達の姿に、兵士達は驚愕した。これまでの戦術が全く通用しない相手を前に、恐怖が広がり始める。


3.戦況の悪化


ガルムの群れはますます勢いを増し、戦車や車両を次々と引き裂いていく。兵士達は勇敢に応戦するが、犠牲者が増えていく中で、ウェイは何とか部隊を立て直すために奔走した。


「退却するしかない!」ウェイは部隊の一部を撤退させることを決断し、負傷者を安全な場所に移送し始めた。彼の決断力と冷静な指揮により、多くの命が救われたが、ガルムの群れは追撃を止めなかった。


その時、ウェイはガルム達の行動に違和感を感じた。彼らはまるで何かに導かれるように進み続け、目の前の敵を攻撃するだけではなく、特定の方向に向かって移動していた。


「彼らは…何かを探しているのか?」ウェイは瞬時にその考えを頭に浮かべたが、その答えを見つける時間はなかった。目の前の戦況は悪化し続け、彼は仲間を守る為に戦い続けるしかなかった。


4.闇の中の異変


夜が更け、戦闘が続く中、ウェイは部隊の生存者と共に新たな防衛線を築こうと試みた。しかし、状況は絶望的で、ガルム達は彼らのあらゆる努力を粉砕していった。


突然、ガルムの群れが一斉に動きを止め、空を見上げた。ウェイもそれに気づき、何が起きているのかを見極めようとした。その瞬間、空から巨大な影が降り立ち、彼らの目の前に現れた。


それは、群れを率いる巨大なガルムだった。その姿は他のガルムとは一線を画し、圧倒的な威圧感を放っていた。彼の姿を見た瞬間、兵士たちは言葉を失い、戦意を喪失しそうになった。


「これが、あの『神話の怪物』…」ウェイは、立ち尽くす仲間達を見ながら、自分達が直面している現実を痛感した。このままでは全滅してしまう。だが、彼にはもう一つ、絶対に譲れない使命があった。


「ここで止めるしかない!」ウェイは、自らの命を賭けて、巨大ガルムに立ち向かう事を決意する。そして彼は最後の力を振り絞り、仲間達と共に巨大な敵へと立ち向かっていった。

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