第5話 祖母布団を作る

ある日のこと。

祖母がリヤカーを借りてきた。

一緒に出掛ける。

私は祖母と出掛けられるのが嬉しいから

スキップしながら。


着いたのは布団屋さん。

お店の人と話してるけど、それより布団の山が

気になってあちこち見て回る。

きんきらの刺繍がしてある布団を見つけて

触りたくなるけど、子供は触っちゃいけないって言われてるから我慢。


祖母に呼ばれたから、駆けつけると大きな鼠色の綿のかたまりをリヤカーに積んだ。

それを、ふたりで引いて帰る。

祖母はリユマチ持ちだったから、きつかっただろうと思う。

膝の水を抜くのが常になっていたからね。


家に着いて荷物を下ろす。

私はなんだろう?これ?

気になって仕方ないのだ。

祖母はひと休みとお茶と乾燥イモを用意してる。

「あれ、なあに?」


「あれかね、なんだと思う?

明日になればわかるがね。

手伝ってちょーよ。」

祖母は楽しそうに笑ったけど、教えてくれなかった。


その夜、私は気になって仕方ない。

明日が来るのが楽しみで仕方なかった。


さて、夜が開けて、朝ごはんを済ませると

祖母は、襷掛けをして、何やら気合いが入っている。


まずは、祖母が布を敷く。部屋いっぱいくらい。

私も手伝って広げていく。

「もっと、そこをな引っ張って皺のないようにせなかんよ。」


祖母に言われて力一杯引っ張る。

こうして広げた布の上にほわほわのふわふわの

真っ白な綿をうすーく広げていく。

ここは祖母が取り仕切る。加減があるらしい。

それを満遍なく敷き詰めると、あの綿。

よくみたら、三つ折りになっていた。

それをゆっくりと広げて位置を合わせるのだ。

ここはお手伝いする。

祖母はあちこちの方向から見ては少し綿を取って違うところへ足す。


「さぁ、これでいいがね。あとはまーいちど

真綿で包まないかん。」

最初の真っ白のほわほわ、ふわふわの綿をネズミ色の綿にうすーく伸ばしていく。

そして、布で包み込む。


「わかったかね?何か?」


「うん、布団だよね。」


「そーだよ、こうやって布団を作るんだよ。

覚えときゃーよ。あとは、周りを閉じ縫いして

綿がずれんように、留針をしなかんよ。

見とりゃーよ。」


祖母は見た事も無い釘のような大きな針を

とりだして、これまた、太い糸を穴に通す。

それをぶすりと刺していくのだ。

そして糸で房を作る。

手際がいい人の仕事は見ていて飽きない。


へたった布団の綿は打ち直しに出して使う。

始末、大量生産、大量消費とは無縁の

生活だった。






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