変質者列伝・その一
私はわりと昔から変な人に遭遇することが多い。
エッセイもどき第二回目はその変な人の中でも「変質者」といわれる類の人たちの話をしようと思う。
「二回目にしてそれ?!」
と思う人もいるだろうし、私も
「二回目でそれはヤバいのでは?」
とも思ったのだが、多分私の人生から「変質者」は切っても切れないので(何故)今回はそれを書こうと思う。
私の記憶の中で一番古いのは幼稚園時代の変質者だ。
相手は男性ではなく中年の女性だった。
うちの近所で遊んでいたら声をかけてきたのがその女性で、最初はその女性の違和感に全く気付いていなかった。
「何してるの?」
確かそんな感じでにこやかに声をかけられたのだが、幼稚園の先生や親から
「知らない人に声をかけられても返事しちゃダメ」
とか
「知らない人についていっちゃダメ」
と教え込まれている真っ最中だったので普通に無視していたような気がする。
でもこの女性、全くめげないタイプだったのかずっと張り付かれて声をかけられ続けたのでうっかり返事をしてしまった。
何と言ったのか覚えてはいないが、私が答えた瞬間の女性の嬉しそうな顔は覚えている。
しばらく話しているうちに私はその女性の違和感に気付いた。
最初は見間違えかと思ったのだが、その異様さに気付いたら急に怖くなった。
私の視線に気付いたのか、女性は素晴らしくいい笑顔で
「見えた?」
と聞いてきたのを覚えている。
怖かったので無言で首をブンブンと振ったような気がしたが、その辺は朧気だ。
でも女性の顔と言葉と行動だけはしっかり覚えている。
「見えたよね? ねぇ、見えたでしょ?」
わたしに顔を近づけてきてそういう女性の顔は本当に嬉しそうで、目なんかキラキラしていた。
「見たよね? 見たでしょ? どうだった?」
今思い返せば狂気的としか言いようがないのだが、その当時の私にそんな単語が分かるはずもなく、ただ怖かった。
興奮気味に私にそう何度も尋ねてくる女性が怖くて動けなくなっていたら、女性は私の手を掴んで違和感の箇所へと導くように私の手を引いた。
恐怖が極限に達した私はそこにきてようやく声を発して逃げることが出来た。
だから決してその場所を触ってはいない。これだけは断言しておこう。
その女性の違和感とは何か。
察しのいい人は分かったかもしれないが、分からなかった人のために正解を書いておこう。
その女性は今でいうTシャツワンピースのようなお尻が隠れる長めのTシャツのみを着ていたのだが、しゃがんで遊んでいた私の視線に合わせるようにしゃがんだ。
子供だったらパンツが見えるなんて気にしないので足を広げて座ることがあるが、大人になった今なら、そんな格好で足を開いてしゃがむ女性はまずいないだろう。
でもその女性は足をガバッと開いてしゃがんだ。
もうお分かりだろうか?
そう、その女性、下着をつけていなかったのだ。
で、私は見てしまったのだ、その女性の股間部分をしっかりと。
そんなの見せられて「どうだった?」と聞かれても気の利いた答えなんて言えるわけもないし、逆に言える子供がいたら見てみたい。
中には喜ぶ人もいるのかもしれないが、大抵の人は引くだろう。
後日話として、その女性は変質者として捕まったようだ。
ようだ、というのは、その情報が母からのまた聞きだから断言ができないからだ。
これが私の変質者列伝の始まりであるのだが、その時の私はそんなことまだ知らない。
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