3
小太郎は考えた末に、
「ちょっとはな」
と答えた。
「表じゃ強がってるが内心ではいつも自分の正しさを疑ってる。反省もきっとするんだろう。だから俺も喜三郎も友でいられるんだ」
弥二郎は岩から飛び降り、な、そうだよなと闇夜に向かって呼びかけた。
その方向に小太郎は顔を向ける。
小太郎が座っている岩と並んで転がっている岩。
その後ろから、また別の影が出てきた。
喜三郎だった。
すでに目は夜に慣れている。喜三郎の顔を見ることができた。
弥二郎が軽快な足取りで喜三郎に駆け寄り、その肩に腕をかけて、共に小太郎の許へ歩み寄ってきた。
弥二郎は喜三郎を抱き寄せながら言う。
「こいつも気にしてたんだぜ。小太郎が本当に残忍なだけの奴だったら、これからは本当に行動を別にするしかないって」
「まさか弥二郎おまえ」
そう、そのまさかだよと弥二郎は人差し指で小太郎を指す。
「俺がおまえの本音を聴き出す。それを喜三郎が隠れて聴く――そういう作戦だったんだよ」
「おまえって奴は――」
小太郎は呆れた。弥二郎は呆れるほどに、頭がまわる。隠れて本音を聴くところまでは小太郎でも思いつくが、本音を引き出す知恵は小太郎にはない。だけど弥二郎は
これだから弥次郎は頼りになるのだと、小太郎はあらためて思った。
この知恵者がいなくては、それこそ天下を穫るなんて夢は叶わない。
小太郎は残りの肉を口いっぱいに頬張り、岩から飛び降りた。
「
「喋るか喰うかどっちかにしろ小太郎」
弥二郎に肩を小突かれた。
「なに言ってるか分からんぞ小太郎」
反対側からも喜三郎に小突かれた。
三人は肩を組んだ。誰からともなく、自然に。
そして宴の中へ戻っていった。
その日は夜通しで宴が続いた。
怪我をしている者もそうでない者も、また本来は心を許せない
騒ぎ続けて、疲れた者から眠りについた。
そして――。
驚きは夜明けとともに襲ってきた。
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