小太郎は考えた末に、

「ちょっとはな」

 と答えた。

 そしられるだろうと思ったが、逆だった。それがお前のいいところだと弥二郎はむしろ褒めた。

「表じゃ強がってるが内心ではいつも自分の正しさを疑ってる。反省もきっとするんだろう。だから俺も喜三郎も友でいられるんだ」

 弥二郎は岩から飛び降り、な、そうだよなと闇夜に向かって呼びかけた。

 その方向に小太郎は顔を向ける。

 小太郎が座っている岩と並んで転がっている岩。

 その後ろから、また別の影が出てきた。

 喜三郎だった。

 すでに目は夜に慣れている。喜三郎の顔を見ることができた。

 弥二郎が軽快な足取りで喜三郎に駆け寄り、その肩に腕をかけて、共に小太郎の許へ歩み寄ってきた。

 弥二郎は喜三郎を抱き寄せながら言う。

「こいつも気にしてたんだぜ。小太郎が本当に残忍なだけの奴だったら、これからは本当に行動を別にするしかないって」

「まさか弥二郎おまえ」

 そう、そのまさかだよと弥二郎は人差し指で小太郎を指す。

「俺がおまえの本音を聴き出す。それを喜三郎が隠れて聴く――そういう作戦だったんだよ」

「おまえって奴は――」

 小太郎は呆れた。弥二郎は呆れるほどに、頭がまわる。隠れて本音を聴くところまでは小太郎でも思いつくが、本音を引き出す知恵は小太郎にはない。だけど弥二郎はねばり強い問いの繰り返しで小太郎から本心を引きずり出した。

 これだから弥次郎は頼りになるのだと、小太郎はあらためて思った。

 この知恵者がいなくては、それこそ天下を穫るなんて夢は叶わない。

 小太郎は残りの肉を口いっぱいに頬張り、岩から飛び降りた。

ほひはふきょふはやふほうとにかく今日は休もう

「喋るか喰うかどっちかにしろ小太郎」

 弥二郎に肩を小突かれた。

「なに言ってるか分からんぞ小太郎」

 反対側からも喜三郎に小突かれた。

 三人は肩を組んだ。誰からともなく、自然に。

 そして宴の中へ戻っていった。

 その日は夜通しで宴が続いた。

 怪我をしている者もそうでない者も、また本来は心を許せない余所者よそものであるイカリもみんな一緒になって騒ぎ続けた。

 騒ぎ続けて、疲れた者から眠りについた。


 そして――。


 驚きは夜明けとともに襲ってきた。

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