4
胴の芯から熱が生まれた。
熱は一気に身体全体を満たした。芯から胴全体へ、さらに四肢を走り、爪の先、髪の一本一本にまで行き渡った。
小太郎は、喜三郎の腰から日緋色金の剣を抜いた。
「雛若さまの恨みだ」
別水彦に駆け寄る。
到達する前に、別水彦も地面から地上に出ていた。素早い動きで別水彦も日緋色金の剣を抜き、構えていた。
互いの武器が交差する。
鈴が鳴るような甲高い音が響き渡った。
「雛若さまに謝れ。
打ち、突き、払う。間断なく攻撃を繰り出す。
だが、やはり技では劣っていた。小太郎の攻撃を、別水彦は丁寧に、かつ無駄のない動きで受け止める。
「待て、待ってくれ」
受け止めながら別水彦は謝った。顔に焦りの色が浮いている。それでも小太郎は攻撃をやめなかった。
小太郎は前進し、別水彦は
「待つんだ小太郎。罠かもしれない。それ以上進むのは危険だ」
後ろから弥二郎が叫んだ。聞こえたし意味も理解したが、体が止まらなかった。
攻めて攻めて攻めまくった。
やがて小太郎の剣が、別水彦の頬を
隙を
ぬう、と別水彦は
あと一押しだ。
小太郎がそう思った途端――。
「すまない!」
別水彦が剣を投げ捨てた。素早くその場に
「儂が悪かった。だから、だから
「どういう意味だ。命乞いじゃないのか」
「命乞いだ。だが、儂の命乞いではない」
「じゃあ、誰の――」
小太郎が
「悪いのはすべて儂だ。儂の命はやる。だから、子供と女たちは赦してやってくれ。それに、戦いに加わっていない者の命も助けてほしい」
頼むこの通りだと別水彦は地面に伏した頭の上で両手を合わせた。
「何が――」
何が赦してくれだよと小太郎は言った。
「雛若さまはそんな願い事を口にする前に死んじまったんだぞ。赦せるわけがねえだろ」
「儂はいい。だから子供と女と戦わなかった者たちは助けてくれ」
小太郎の中で、黒い炎が燃えあがった。
「そこまで言うんだったら、望み通りにしてやるよ」
小太郎は剣を振りかぶった。
その手が、掴まれた。
振り返る。
喜三郎がいた。振りあげた小太郎の手を、喜三郎が背後から掴んでいる。
力づくで振り払うこともできたが、そうはしなかった。
小太郎は喜三郎の手から自分の腕をそっと抜いて、喜三郎と向き合った。
「ここまで謝ってるんだ。もういいだろう」
「良いわけがあるか」
「俺たちだって、この邑の人々をさんざん殺した。これ以上殺したら、買う恨みが大きくなるだけだ」
「恨み?」
へん、と小太郎は鼻で笑った。
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