2
その声の主と思われる男たちが、屋敷の中から出てきた。
人数は十一人。いずれも黒尽くめだ。
屋敷を背に横へ広がった。
「それだけの人数で勝つつもりか」
挑発気味に、小太郎は呼びかけた。だが敵は恐れる様子を見せない。
真ん中の男が言う。
「数に頼るは愚か者のすること。こっちには、これがあるのだ」
一斉に剣を抜き放つ。
刃が赤いく輝いていた。
日緋色金の剣。
邑人たちが短い悲鳴をあげた。あの剣は無敵だ。邑人たちはそれを知っている。いくら勢いづいていても、無敵と知っている武器を手にした敵の前で怖気づかずにはいられない。しかも死傷者が出ている。疲れも感じている。余計に士気も下がるだろう。
先頭に立っている小太郎は、背後にいる仲間たちがわずかに
その仲間たちが再び悲鳴をあげた。
邑人とは違う気配を、小太郎は背後から感じた。
首を捻って後ろを向く。
背後にも、日緋色金の剣を持った黒尽くめの男たちが立ち塞がっていた。人数はやはり十一人。
両側には家がある。
逃げ場はなかった。
「むざむざとここまでおびき寄せられるとはよほど頭が足りないらしい」
かかれかかれと正面にいた黒尽くめが命じた。
前後から、合計二十二人の敵が押し寄せてくる。
「こんな展開くらい読めてたってんだよ」
みんな、と小太郎は仲間に呼びかける。
「
周囲に邑人が密集した。両脇に喜三郎と弥二郎、背後にイカリ、そのまわりに他の村人たちという層ができた。
小太郎は片手を天に掲げた。
目を閉じる。
風を感じた。
熱、圧、向き。
小太郎は
「
竜の姿が脳裏に浮かんだ。
「
目を開ける。
「
あげていた手をぐるりと一回転させた。
空気が
光が屈折し、周囲の景色が歪む。
直後――。
風が起きた。
小太郎を含む味方全員を、風の壁が取り巻いている。
壁は
味方が悲鳴をあげた。
守られていると知っていてもこの音には恐怖を感じるのだろう。
飃の外からも悲鳴が聞こえた。
黒尽くめの男たちの声だ。
飛ばされまいと必死なのだろう。黒尽くめたちは腰を落として耐えている。
着物がはためき、髪が乱れる。
土煙が舞う。石が飛ばされる。
踏ん張っている男たちの足が、ずず、ずず、と地面の上で滑る。
一人が浮いた。
二人目が飛ばされた。
五人が舞い、十人が散った。
やがて黒尽くめたちの全員が風の中に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます