7
「何があろうと、盗まれちゃいけないって雛若さまが言ってるものがあるんだ。だったら俺たちはそれを守らなきゃならない。違うか」
「その通りだな」
喜三郎は
「だったら早く行くぞ、カイナ神社へ」
言い終わる前に、小太郎は駆け出していた。
その背中を、弥二郎は追おうとした。
そのときだった。
光が
空で、細長い何かが、陽光を照り返して赤く
槍だった。しかし短い。持って敵を突く槍ではなく、投げて敵を
空を切り裂いて短槍は飛ぶ。
短槍は一直線に小太郎の背中に向かっていた。
弥二郎は
二本目を放つ余裕はない。
「危ない!」
そう叫ぶのがやっとだった。
小太郎が振り返る。
赤い影が横切った。
左から右へ。
その影に、小太郎は突き飛ばされた。
影は雛若だった。赤かったのは暖暖丸を着込んでいたからだ。その暖暖丸を――。
短槍が貫いた。
「うッ」
雛若は短く呻いてうつ伏せに倒れた。
「しっかり!」
もともと
突き飛ばされた小太郎はやっと身を起こしたところだ。目を
「雛若さま!」
腰をあげ、すぐに雛若に駆け寄ってきた。
弥二郎も雛若の近くまで走った。
地面に片膝をついて、その顔を見つめる。
蒼白だ。
「雛若さま」
声をかけるが返事がない。
胸に手を当てた。鼓動が感じられた。
まだ命はその
三人が雛若を取り囲むその外側に、ほかの邑人たちも群がっている。
口々に雛若の名を呼ぶ。しかし返事はない。
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