3
「なんでだよ。簡単な気がするけどな」
小太郎は弥二郎に訊く。やれやれと弥二郎は背中で手を組み空を見上げて語った。
「それができたらとっくにそうしているさ。でもできないんだよそれが。雛若さまには」
「だから、なんで」
「今朝も聴いただろう。泉邑の
鎮痛な声でそう言って、だからできねないのだと弥二郎は締めくくった。しかし一転、弥二郎は表情を明るくして小太郎を見た。
「――と俺は想像しているわけだ」
そして雛若に歩み寄り、
「敵と親しいなどという
とやや頭をさげた。
雛若は、
「それより三人とも、頼んだよ。すぐに着替えて道の封鎖に向かっておくれ」
おう、と三人は声を
◆
喜三郎たち三兄弟は
三人の武器は鎌と釘と力――そして速さだ。鎧を着るとその重みで、武器のひとつである速さが
そこで三人は、普段の着物から、獣の革でできた厚手の衣に着替える。
着替える場所は雛若の屋敷の一画にある。そこで、弥二郎と喜三郎は着替えていた。
その部屋に、小太郎だけがいなかった。
「俺、わかったぜ」
衣を着け終えて、喜三郎は言った。
「何がだよ」
帯を締めながら弥二郎が訊く。
小太郎の秘密だと喜三郎は答えた。
「俺たちがここでこうやって着替えるとき、あいつだけいつも別室で着替えてる。なぜなのかずっと考えてたんだが、その答えが今わかった」
「俺もそれは気になってたが、答えはわからんな。おまえの出した答えは何だ喜三郎」
「小太郎、あいつ本当は――」
顎に指をを添えて喜三郎は答えた。
「――女なんじゃないか」
「はあ?」
弥二郎は首を突き出して口を半開きにした。
「違うと思うか弥二郎」
「あの怪力だぞ。さすがにないだろう」
「いいや俺はあると見た。俺たちは三兄弟とは言うものの、血が
「それはそうだけど――」
それだけじゃないぞと喜三郎は弥二郎の発言を遮った。
「幼い頃からずっとに遊んでいたが、湖で泳ぐとき、それから体を洗うとき――つまり裸になるときだけは小太郎は一緒じゃなかった」
「言われてみればそうだな。もしや本当に――」
◆
脱ごうとした着物が引っかかった。
引っかかったのは脇腹だ。
小太郎は脇腹を触った。
他の部分と違って、そこだけ色が違う。黒みを帯びた緑色になっている。しかも硬い。乾いて水気のないその皮膚は
前世での
だがそうと知りつつ、先代の邑長は小太郎を育ててくれた。
はじめは隠していたが、そのうちに他の邑人たちに見つかった。
当時、まだ泉邑のいち邑人だった先代の邑長は、他の邑人から迫害を受けた。小太郎も石を投げられた。雛若は殺されかけた。
しかし邑長はそれでも小太郎を捨てなかった。
そして――。
邑長と雛若と小太郎は、山の上に登り、平邑の基礎を作ったのだ。
弥二郎と喜三郎が引き取られてくる前のことだった。
小太郎は脇腹の皮膚に引っかかった着物を力づくで剥ぎ取った。
この病さなければ――という、ぶつけどころのない悲しみが湧いてきた。
いつもの、ことだった。
小太郎は衣を
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