3・風雲急を告げる
1
「こちらも
泉邑が戦支度をしているという報告を小太郎たちが
従者の顔は
その様子を、小太郎は地面に膝をついて見ている。
雛若の屋敷の前だ。ほかの邑人の住居と違って、雛若の屋敷は地面から浮いていた。多くの住居は地面に掘った穴の上に
床が高いので、屋敷に入るための
小太郎が
弥二郎と喜三郎も並んでいる。
「何を言っているのか聞こえないよ。言いたいことがあるならはっきり言いな」
雛若が、青褪めた従者を
「されば」
と言った。まだ声は上擦っているものの、さっきよりは落ち着いたらしい。従者は雛若の命令に対する
「邑人のほとんどは老人ばかり。若い男は数が少のうございます。とても戦いにはならないかと」
「そう思うかい?」
雛若はなぜか笑顔をつくった。それに不信を抱いているのか、違いましょうかと従者は尋ねる。違う違うぜんぜん違うよと雛若は明るく答えた。
「いいかい。戦いと言ってもこちらから攻め込む必要はないんだ。防ぐだけでいい」
「防ぐだけとはいえ――」
まあ最後まで聞きなよと雛若は従者の言葉を遮った。
「平邑と泉邑を繋ぐ道は一本だけ。守るだけなんだからその道を押さえればいい。しかもその道は狭い。相手の隊列はどうしても縦長になる。だから相手がどんな大人数だろうと、こっちはその先頭から順番に倒していけばいいだけのこと。さらに――」
雛若は人差し指を立てて続ける。
「平邑は山の頂上。攻めてくるなら斜面を登ってこなけりゃならないんだ。上から投げ落とせるものがあればそれらはすべて武器になる。矢はもちろん、丸太でも岩でも熱湯でも、糞や小便だって武器になる。そういったものでまずは敵を近寄らせない。それをかい
それでも戦いにならないと思うかい、と雛若は最後に従者に問うた。
青褪めていた従者の顔には、血の色が戻っていた。
「それなら、いくらかは希望もありそうですな」
従者は低い声で、しかし強く答えた。分かったようだねと雛若は笑みを向ける。
「分かったら早く邑人全員に伝えな。戦える者は武装して泉邑に続く道を塞ぐようにってね。戦えないものは木を
「は」
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