6
威張る小太郎の肩に、喜三郎が手を置いた。
「こんなちっぽけな体に、よくもまあ、あんな怪力が
顔を上下にゆったりと振る。普段から
弥二郎が、喜三郎に人差し指を突きつけた。
「おい、化け物とは失礼だぞ」
「褒めてるんだよ」
「だったら、もっと言葉を選べよ」
「選んだ結果がこれだよ」
「もっと言葉を知れよ」
「まあまあまあまあ」
当の小太郎本人が仲裁にはいった。
弥二郎と喜三郎の間に割り込み、両手を左右に開く。対立していた二人はその手に押されて後退した。
「良いって良いって。言葉の一つや二つ、おいらは気にしねえよ。それよりも興味が湧いた」
「興味?」
弥二郎と喜三郎の声が重なった。
「そう、興味さ」
小太郎は少年二人から離れ、雛若の
「ねえ雛若さま」
小太郎は雛若のまわりを軽やかに一周してから、雛若の腰に自らの肩を
上目遣いに雛若の顔を見あげる。その顔を雛若は見下ろした。
小太郎も弥二郎も喜三郎も歳は同じだが、小太郎は顔が丸い分、他の二人よりも幼いように見える。こうして甘える様子を見せるのも小太郎だけだ。
「雛若さまが、さっきの毛むくじゃらに言ってたことなんだけどサ」
「毛むくじゃらじゃなくて、別水彦ね」
「そう、そのヒコ」
小太郎は体を離して指を立てた。別水彦がどうしたんだいと雛若は尋ねる。
「ヒコに言ってたことが気になったんだ」
「なにか言ったかな、私」
「勇ましいこと言ってじゃん。ほら、もし攻めてきたら手加減はしない、せめて来るなら覚悟を決めろォ――って」
「ああ、それね。うん、言ったよ。それに興味が湧いたわけ?」
「もちろん」
「どんな?」
「だって、この邑のみんなは戦えないぜ。一応武器なんかはあるみたいだけど、ちゃんと使える奴なんてほとんどいない。それなのにあんなに強気に出たってことは、なにか秘策があるからなんだろ。それを知りたいんだ。どんな秘策を温めてんだい」
おお、と弥二郎と喜三郎が同時に声をあげた。
「俺もそれは気になる」
弥二郎が切れ長の目を輝かせた。
「俺も知りたい」
喜三郎も顔を上下に揺らす。
離れていた二人は、大股三歩で近寄ってくると、小太郎を間に
「そんなに知りたい?」
「知りたい知りたい」
三人は声を合わせる。分かったよと雛若は答えた。
「泉邑が攻めてきたときの秘策、それは――」
「それは?」
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