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別水彦のまわりをぶらぶらと歩きながら雛若は語る。
「いいかい別兄。ここ
「それは儂もわかっておる。だが、水を流されたら、
「だァかァら」
別水彦のまわりを一周した雛若は、人差し指を別水彦の
「
「ふうむ、なるほどなあ」
「解ったらさっさと帰りな」
別水彦は深く
「よく解った。では」
別水彦は一礼して、境内の外に向かって三歩ほど進む。そのまま変えるかと思いきや、急に戻ってきてちょっと待てと怒鳴った。
「危うく
「交渉ごと、向いてないんじゃない?」
「黙れ。今年は雨が多かったことをおぬしも知っておろう」
「もちろんだ。だから今年はなんとしても流したいんだ。湖の水が、今にも
「それがいかんのだ。今年の大雨で泉邑にも被害が出た。今も川は水でいっぱいだ。その上にここからさらに水が放流されたのでは泉邑は
「別兄まさか――」
雛若は別水彦を見た。
「なんだ」
別水彦も太い眉を寄せる。
雛若は唾を飲み、そして訊いた。
「それ、誰かに言われただけで、別兄は何も理解してないなんじゃないのか」
「黙れ黙れ黙れ」
別水彦は甲高く
「とにかく質問に答えてもらおう。放流をやめるか、やめないか。答えはいずれか一つだ」
しかし雛若は答えなかった。答えないかわりに
「昔は仲良く遊んでいたのになあ」
漏らしながら、別水彦から遠ざかる。
「それが今は敵対する邑同士の長か。残念だな」
言い終わったときには、社殿の
「情に訴えても無駄だ。早く答えぬか」
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