Episode7 聖夜のお家デート 後編



○東京にある彩花の家・リビング(夜)

    一条彩花とアリス・バートンがソファでのんびりしている。

   (SE:背もたれに寄り掛かる音)


彩花 「お腹いっぱいだー‼ 腹がはち切れるぅ〜」

アリス「1ホール食べようとするからでしょ」

彩花 「目の前にあったら食べたくなる。

    それが人のさがというものでしょうが‼」

アリス「馬鹿なだけでは?」

彩花 「現実なんて聞きたくない!」

彩花 「自制できないで食べるとか……子供か」

彩花 「むきぃいい。そうです〜。子供ですぅ。19歳の子供なんですぅ」

アリス「そうだったね。おデブちゃん」

彩花 「おい、それは違う‼ アタシはデブじゃない‼」

アリス「はいはい」

彩花 「ちゃんと聞いて⁉」

アリス「食べ過ぎてありえないくらいお腹張ってる子が何か言った?」

彩花 「うぅ〜〜。くるしぃい」

アリス「……もう。少し横になったら?」

彩花 「では、失礼して」

アリス「聞き分けが……ん?」


   (SE:膝枕する際の衣擦れ音)

    彩花、アリスの膝に頭を乗せる。


アリス「なんで私の膝上なわけ?」

彩花 「大学一の、クール系美少女の膝枕が最高だから?」

アリス「なぜに疑問形? てか、なにその肩書き」

彩花 「男どもがいやらしい視線、向けてきてるじゃん」

アリス「反吐が出る」

彩花 「辛辣ぅ〜」

アリス「イケメンで尚且つ性格がいい男なら許す」

彩花 「理想たっっっっかぁ」

アリス「ぶっちゃけイケメンでなくてもいい。浮気しなければ」

彩花 「何があったんすか。過去に」

アリス「全て知ってるのでは?」

彩花 「まぁ〜ね」


   (SE:アリスが彩花の頭を撫でる音)


彩花 「おぉ〜美少女に膝枕されて頭を撫でられるとは。

    理想郷はここにあったか」

アリス「安い理想郷なことで」

彩花 「多分、男からしたら高価だと思うけどね」

アリス「膝枕が?」

彩花 「アリスの、膝枕が」

アリス「なにそれ」

彩花 「なんだったら抱き締めてくれても、――」

アリス「調子に乗らない」


   (SE:アリスが彩花の頭に軽くチョップを入れる音)


彩花 「あ、痛」

アリス「適当ばっかり言わないの」

彩花 「ぶーぶー」

アリス「まったく……あ、外見て」

彩花 「うん?」


   (SE:彩花が外の方に顔を向ける音・衣擦れ音など)


彩花 「おぉ〜〜〜雪降ってるじゃん」

アリス「ホワイトクリスマスだね」

彩花 「東京で雪を拝めるなんて〜。幸せですなぁ」

アリス「東京でも年に数回、雪は降るけどね」

彩花 「こら。水を差すな」


   (SE:彩花がアリスの頭に軽くチョップを入れる音)


アリス「あ、痛。暴力反対〜」

彩花 「そっちが先にしたんだが⁇」

アリス「そうだったね。……外に出る?」

彩花 「いいよ、寒いし」

アリス「……よく水を差すな、とか言えたね」

彩花 「だって本当のことだし」

アリス「風情がないなぁ」

彩花 「それよりも頭をなでたまえ」

アリス「はいはい、仰せのままに」


   (バックSE:アリスが彩花の頭を撫でる音)※開始


彩花 「いやぁ〜幸せですなぁ」

アリス「左様で」

彩花 「……なんか、どんどん日本語が達者になってません?」

アリス「誰かさんのせいで、どんどん覚えていきます」

彩花 「優秀だね、その人」

アリス「そういうことにしておいてあげる」

彩花 「優しさが染みる〜」


   (バックSE:アリスが彩花の頭を撫でる音)※終了

   (SE:アリスが傍にあったバックから箱を取り出す音)

   (SE:アリスが箱を彩花の頭にコツと当てる音)


彩花 「あ、痛……デジャブ?」

アリス「ちょっと違うかな? はい、プレゼント」

彩花 「マジ⁉ やったぁ〜」

アリス「もちろん、彩花もクリスマスプレゼントあるよね?」


    彩花、黙り込む。場に沈黙が流れる。


アリス「……やっぱり。買ってないと思った」

彩花 「と思うじゃん?」

アリス「え?」


   (SE:彩花、ソファの下から箱を取り出す音)


彩花 「じゃじゃーん。買っておいたんだなぁ〜」

アリス「ソファの下から出てくるなんて……」

彩花 「そこじゃなーい。こっち見てよ! ちゃんと買ったんだよ⁇」

アリス「そうだね〜毎年忘れてたもんね〜。エラいエラい」

彩花 「……なんか馬鹿にされてる気がする」

アリス「気のせいだよ。彩花ちゃん♡」

彩花 「やっぱり馬鹿にされてる気がする!」


   (SE:彩花が起き上がる音・衣擦れ音やソファが軋む音など)


彩花 「はい、どうぞ。受け取りやがれ」

アリス「もう、拗ねないでよ」

彩花 「拗ねてないし!」

アリス「分かりやすいなぁー。プレゼント、ありがとう。嬉しい」

彩花 「そりゃー、よーこざいました!」

アリス「もう……はい、私も。メリークリスマス」


   (SE:もし可能ならお互いの荷物を交換する音など)


彩花 「……ありがとう」

アリス「どういたしまして」


   (SE:彩花がまたアリスの膝上に寝転がる音)


アリス「うわぁ。急にどうしたの⁇」

彩花 「すまんすまん」

アリス「……私の膝上、そんなに気に入った?」

彩花 「気に入った。褒めて使わす」

アリス「ありがたき幸せ……で、本当のところは?」

彩花 「動いたら吐く。お腹パンパン。マジきつい」

アリス「はぁ。情緒ないなぁ、ほんと」

彩花 「ちょっと起き上がっただけで吐くかと思った」

アリス「来年、成人したらどうなることやら」

彩花 「お酒で吐く未来が見えるよ。アタシには」

アリス「そんな未来、現実にしないでね」

彩花 「……無理かもしれん」

アリス「ちょっと⁉ それは未来、それとも今⁇」

彩花 「…………どっちだと思う?」

アリス「どっちもダメだからね⁉」


   (SE:アリスが彩花の頭を撫でる音)


アリス「ほら、いくらでも頭撫でてあげるから」

彩花 「いやぁ〜さいこう〜。ここは天国だぁ」

アリス「まったく。調子いいんだから」

彩花 「うへぇ〜」

アリス「……外に放り出してあげよっか」

彩花 「何故に⁉ 君は悪魔か⁉」

アリス「いいえ、サンタです」

彩花 「そんな鬼畜なサンタはいません‼」


   (SE:アリスが彩花の頭を撫でる音)


アリス「まぁ、落ち着くまではこうしててあげる」

彩花 「……ツンデレ?」

アリス「窓開けるか」

彩花 「ウソウソ」

アリス「ほら、早く目を瞑る」

彩花 「寝かしつけてくれたりして?」

アリス「…………ふぅーん」

彩花 「そんなゴミを見るような目を向けないでくれる⁉」

アリス「はいはい。もう寝て。早く。今すぐに」

彩花 「理不尽過ぎんか⁈」

アリス「吐かれたら嫌だからね。クリスマスイブに」

彩花 「……マジ、ごめん」

アリス「いいよ。別に」


   (SE:アリスが彩花の頭を撫でる音)


彩花 「やっぱり、アリスはツンデレだよ」

アリス「あなたの前では、そうかもね」

彩花 「……ありがとう」


    彩花が目を瞑る。アリス、彩花の耳元で囁く。

   (SE:アリスが彩花の頭を撫でる音)

   (SE:アリス、彩花に近付く音・衣擦れ音など)


アリス「おやすみなさい。いい夢を」



《続く》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る