Episode6 聖夜のお家デート 前編



○東京・彩花の家(夜)

    一条彩花の家にアリス・バートンがやってくる。

   (SE:チャイムが鳴る音)

   (SE:彩花が小走りする足音)

   (SE:インターホンに出る音・ボタンを押す音など)


彩花 「はーい」

アリス「ウー〇ーイーツです」

彩花 「ほいほい、ちょい待ち〜」


   (SE:彩花が玄関まで小走りする足音)

   (SE:彩花がサンダルを履く音)

   (SE:扉の解錠音)

   (SE:扉を開ける音)


彩花 「はーい」

アリス「ローストチキンとケーキになります」

彩花 「あざますあざます。どうぞ上がっていってくだせぇー」

アリス「いいんですか?」

彩花 「エセ配達員のアリスさんならいつでも」

アリス「エセって言わないでくれる? さっきまで本当にやってたから」

彩花 「クリスマスイブまでお仕事っすか」

アリス「稼ぎ時なんで」

彩花 「配達員よりスキマバイトの方が楽じゃね?」

アリス「これもスキマバイトみたいなもんじゃない?

    それにスキマバイトって人と話す仕事ばっかりでしょ?」

彩花 「それもそっか。寒かったっしょ? 入りな、ねーちゃん」

アリス「では遠慮なく。お邪魔します」


   (SE:2人が数歩玄関先を歩く音)

   (SE:アリスが最後に入って扉を閉める音)

   (SE:扉の施錠音)


アリス「あ、ケーキは冷蔵庫に」

彩花 「もちもち」


   (SE:彩花がサンダルを脱ぎ捨てる音)

   (SE:アリスが靴を脱ぎ、揃える音)


アリス「……スリッパくらい買ったら?」

彩花 「え、いらなくね? どうせ履かないし」

アリス「ずぼらだなぁ〜」


   (SE:彩花とアリスが通路を歩く音)

   (SE:彩花がキッチンにケーキを置く音)

   (SE:彩花、ケーキの箱を開ける音)


アリス「つまみ食いNG」

彩花 「え?」

アリス「する気だったでしょ?」

彩花 「もーう。アタシのこと、なんだと思ってるのさ〜」

アリス「食い意地がすごい大型犬」

彩花 「人ですらなかった⁉」

アリス「ケーキの種類ならチョコレートケーキだから安心して」


   (SE:アリスがビニール袋をキッチンに置く音)

   (SE:アリスが袋からジュースを取り出す音)


彩花 「……お見通しっすか」

アリス「何年友達やってると?」

彩花 「流石でございます。アリスさま」

アリス「ショートケーキもチーズケーキも好きだけど、

    チョコケーキが1番でしょ?」

彩花 「はい、1番でございます!」


   (SE:アリスが冷蔵庫を開ける音)


アリス「あ、ジュース入れるついでにケーキも入れとくね?」

彩花 「サンキュー」


   (SE:アリスが冷蔵庫にジュースやケーキを入れていく音)


彩花 「(鼻歌)ふんふんふーん♪」

アリス「ふふ。犬が尻尾振ってるみたい」

彩花 「ワン!」

アリス「……知能指数まで犬レベルになってしまったか」

彩花 「美味しいご飯をくれるご主人様になら、犬にもなってみせましょう!」

アリス「願い下げなのでお引き取りください」

彩花 「なんですと‼ こんな絶世の美少女をペットにできるのに⁇」

アリス「調教する方が好きなので」

彩花 「……え?」

アリス「最初から従順な子ってつまらなくない?」

彩花 「…………ま、またまた〜。ご冗談をぉ」

アリス「本気だけど?」

彩花 「ひぃいいいい、アリスに調教されるぅうう」


   (SE:アリスが冷蔵庫を閉める音)


アリス「ふふ、ジョークだよ」

彩花 「アリスが言うと冗談に聞こえないから止めてくれる⁈」

アリス「どういう意味よ、それ……電子レンジ借りるね?」

彩花 「どうぞ〜。あ、上着預かるよ」

アリス「ありがとう。助かる」


   (SE:アリスが上着を脱ぐ音)

   (SE:彩花、少し離れたハンガーラックまで歩く足音)

   (SE:彩花がアリスの上着をハンガーに掛ける音)

   (SE:アリスが袋からローストチキンを取り出す音)

   (SE:アリスがローストチキンをお皿に乗せる音)

   (SE:アリス、電子レンジにローストチキンを入れる音)


アリス「オーブンがあったら美味しくなるけど……」

彩花 「うちにオーブンはございません!」

アリス「分かってる分かってる」


   (SE:アリス、電子レンジを閉める音)

   (SE:電子レンジのタイマーをセットする音)

   (バックSE:電子レンジで加熱する音)※開始


彩花 「今日は何か作るの?」

アリス「今日はナシ。クリスマスイブまで料理を作るのは面倒だし」

彩花 「それもそっか」


   (SE:彩花、少し離れたハンガーラックから戻ってくる足音)


アリス「そう言えば、小テストどうだった?」

彩花 「当然、余裕でしたよ〜」

アリス「相変わらずだね。ちゃっかり勉強して」

彩花 「どういう意味だ⁉ ちゃっかりも何も勉強したからね‼」

アリス「根は真面目ですなぁ〜」

彩花 「違いますぅ〜。アタシ、悪い子ですぅ〜」

アリス「……まぁ、馬鹿なんだけど」

彩花 「ん〜? 何かな〜⁇」

アリス「まぁ、馬鹿なんだけど」

彩花 「なんて言ったって意味じゃないわ!」


   (SE:アリス、ポットを下の台から外して持つ音)

   (バックSE:アリス、ポットに水を入れる音)※開始


アリス「飲み物、あったかいのでいいよね?」

彩花 「ココアで!」

アリス「ココアの粉ってあるの?」

彩花 「ありません!」

アリス「……馬鹿なの?」


   (バックSE:アリス、ポットに水を入れる音)※終了


アリス「ここ、あなたの家でしょ?」


   (SE:アリス、ポットをセットする音)

   (SE:アリス、ポットの沸騰ボタンを押す音)


彩花 「アリスの方がよく知ってるよ〜」

アリス「じゃあ、紅茶でいい? この前買ったのがまだあるから」

彩花 「やっぱり、イギリス生まれっすねぇ〜。母国の味ってやつ?」

アリス「コーヒーの方が好きだけどね」

彩花 「あれぇ〜?」

アリス「ローストチキンにコーヒーは合わなくない?」

彩花 「それはそう」


   (バックSE:電子レンジで加熱する音)※終了

   (SE:電子レンジを開ける音)


アリス「これ、先にテーブルに置いておいて」

彩花 「りょーかい。うひゃ〜〜美味しそうぉ〜」

アリス「付け合わせも何もないけどね」

彩花 「いいのいいの〜。肉を貪りましょうぜ、姉御!」

アリス「姉御は願い下げなのでお引き取りください」

彩花 「あれぇ〜? デジャブ感が……」

アリス「気のせい気のせい」


   (バックSE:彩花がスキップする足音)※開始


彩花 「クリスマスが今年もやって来る〜♪」

アリス「陽気だなぁ」

彩花 「ジングルベルジングルベル〜鈴が鳴る〜♬」

アリス「曲、変わったなぁ」


   (バックSE:彩花がスキップする足音)※終了

   (SE:彩花がお皿を机に置く足音)


彩花 「どぉこーかで、鐘が鳴って〜♪」


   (SE:彩花がキッチンまで戻ってくる足音)


彩花 「会いたいと思う回数が♪」

アリス「歌詞飛んでるよ〜」

彩花 「いいのいいの。こんなのノリと勢いだし」


   (SE:ポットの沸騰が完了する音)

   (SE:彩花がコップをキッチンに置く音)


アリス「ありがとう」

彩花 「いえいえ〜」


   (SE:アリスが紅茶のパックを開ける音)

   (バックSE:アリスがコップにゆっくりとお湯を注ぐ音)※開始


彩花 「いやぁ〜。いい匂いですなぁ〜」

アリス「いい紅茶だからね」


   (バックSE:アリスがコップにゆっくりとお湯を注ぐ音)※終了


彩花 「持っていきましょう」

アリス「お願いね」


   (SE:彩花、机まで歩く足音)

   (SE:アリス、ポットを元の位置に戻す音)

   (SE:アリスが机まで歩く足音)


彩花 「食べよ食べよ」

アリス「うん」


   (SE:2人が席に着く音)


彩花 「では、聖夜に独り身な2人に」

アリス「その言葉、なんかむかつくから却下」

彩花 「えぇ〜。じゃあ、来年は恋人作るぞ〜同盟に」

アリス「そもそも紅茶で乾杯なんかする?」

彩花 「雰囲気だよ、ふ・ん・い・き!」

アリス「はいはい」


   (SE:彩花が椅子を前に移動させる音)


彩花 「じゃあ、君の瞳に」

アリス「はっず」

彩花 「やかましいわい! はい、かんぱーい」

アリス「小テスト、お疲れ様〜」


   (SE:コップを合わせる音)


彩花 「それがあったか!」

アリス「やっぱり馬鹿だったか」

彩花 「なんですと‼」

アリス「はいはい、いただきまーす」

彩花 「こら、話を逸らすな‼

    ねぇ、聞いてる? ねぇー⁉」



《続く》

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