Episode4 夏の江ノ島旅行 前編



○片瀬江ノ島駅・駅前の広場

    一条彩花とアリス・バートンは、服を靡かせながら唖然と立ち尽くす。

   (SE:強風・強雨の音)


彩花 「うわぁ……これはまた……」


    彩花、目を細めて周囲を見渡す。

    誰もいない駅前を見て、彩花は両手を広げて天に叫ぶ。

   (SE:彩花が1歩前に出る足音)

   (SE:もし可能なら両手を広げた際の衣擦れ音など)


彩花 「おー神よ。なぜですか神よ!

    江ノ島旅行をこんなにも楽しみにしていたのに。

    なぜなのですか⁉」


    アリス、彩花を見て溜息を溢す。


アリス「都合の良い時だけ神に祈って……」

彩花 「なにさー。いいじゃんか、別に!」

アリス「別にいいけど……」


   (SE:アリスがバックを開ける音)

    アリス、ジト目でスマホ画面を見せる。


アリス「神は見放したみたいよ?」

彩花 「うぅーん? 読めないなー」

アリス「あら変ね。スマホの文字は日本語のはずだけど」


   (SE:アリスが1歩近付く足音)

    アリス、更に画面を近付ける。彩花、目を閉じて画面を覗く。


彩花 「うん。まったく読めないね」


   (SE:アリスが彩花の頭に軽くチョップを入れる音)

   (SE:彩花が大袈裟に頭を抑えてしゃがむ音)


彩花 「あ、痛っ」

アリス「馬鹿か」

彩花 「いきなりチョップは酷くない⁉」

アリス「目を閉じて『見えない』とか言うからでしょ。

    はい、ちゃんと現実を見る!」


   (SE:アリスがしゃがむ音)

    アリス、しゃがんで画面を再度見せる。

    彩花、渋々細目で読む。


彩花 「……台風、連休を直撃」


   (SE:強風・強雨の音)

   (SE:もし可能なら2人の髪や夏服が靡く音など)

   (SE:アリスがバックにスマホをしまう音)

   (SE:アリス、濡れた服を絞る音)


アリス「はい、とういうことで帰りましょう」


   (SE:アリスが立ち上がって1歩踏み出す足音)


彩花 「待って。ここまで来て帰るの⁇」

アリス「……当たり前でしょ。風邪引いちゃうし」


    アリスは歩きだそうとする。彩花、足に抱きつく。

   (SE:もし可能であれば彩花がアリスの足に抱きつく音)


彩花 「待て、ブス‼」

アリス「――ちょっと⁉ 濡れた服で抱きつかないでよ。

    てか、ブスって言った⁇」

彩花 「そんなことどうでもいいじゃん!」

アリス「少なくともあなたが言う台詞ではないよね⁇」

彩花 「そんなこと知るか!

    美味しいスイーツは? 食べ歩きは⁇ しらす丼は⁇」

アリス「うわぁ。食い意地しかないんだけど……」

彩花 「食べるって約束だったじゃん!」

アリス「お店やってるわけないでしょ」

彩花 「やってるに決まってるじゃん‼

    やってなくても私が来たら開けてくれるよ‼」

アリス「その自信、どこから来るの?」


   (バックSE:彩花が抱きついたまま、アリスが歩き出す足音)※開始


彩花 「イヤだイヤだイヤだ‼」

アリス「あぁーもう! しつこい!」

彩花 「アリスが『うん』って言うまで離さない!」

アリス「ワガママ言わないの。ほら、帰りまちゅよ〜、いい子にできるかな〜」

彩花 「バカにしてんのか⁉」

アリス「えぇ〜〜」

彩花 「このエセ日本人‼」

アリス「バカにしてんのか⁉ いい年したガキンチョがぁ‼」


   (バックSE:彩花が抱きついたまま、アリスが歩き出す足音)※終了

   (SE:アリスが彩花の肩をポンっと叩く音)


アリス「このままじゃ電車も止まっちゃうかもよ?

    帰れなくなっちゃうよ?」

彩花 「じゃあ、泊まっちゃおう」

アリス「アホか」

彩花 「うわぁああああ、アリスがアホって言った!」

アリス「さっきから子供か! ほら立つ‼」

彩花 「ねぇぇえええなんでぇ! なんでなんでなんでぇ‼

    うわぁあああん。アリスなんて大っ嫌いだぁ!」

アリス「はいはい、そうですねー」


   (SE:アリスが彩花を引き摺る音)

   (SE:強風・強雨の音)

    アリスが引き摺って動かそうとするも彩花は動かない。

    彩花、強風・強雨の中で叫ぶ。


彩花 「■■■」

アリス「何言ってるか分かんないんだけど⁇」

彩花 「■■■‼」

アリス「……あぁーもう‼」


   (SE:アリスが彩花を抱える音)

    アリス、彩花に顔を近付ける。


アリス「本当に風邪引くから! 一旦中入ろう‼」

彩花 「イヤだイヤだイヤだ。遊びたい‼」

アリス「だから遊べないんだって‼」

彩花 「誰が決めたのさ。

    雨が降ってるから? 風が強いから?

    そんなの関係ないね!」


   (SE:彩花、しゃがんだまま1歩、アリスから離れる足音)


彩花 「そんなつまらない大人になんてなりたくない。

    なんでも楽しんだ者勝ちなんだよ!」

アリス「彩花。あなた……」

彩花 「なんでもルールだから、危ないから。とか知ったこっちゃないね‼

    私は残る! ぜぇーーったいに残るったら残る!」


   (SE:強風・強雨の音)

    アリス、しばらく考えてから溜息を溢す。


アリス「分かった」

彩花 「ほんと⁉」

アリス「ええ。ここまで着ちゃったし、ここで泊まる覚悟でこのまま遊びましょう」


   (SE:彩花が立ち上がる音)

   (SE:彩花がアリスに抱きつく音)


彩花 「分かってくれると思ってたよ。

    大好き〜。世界で一番愛してる〜♪」

アリス「はぁ……本当に都合がいいんだから」

彩花 「別にいいじゃん。細かいことは気にしない!」

アリス「あっそ。じゃあ宿泊代はそっち持ちね」

彩花 「なんですと⁉」


   (SE:アリス、雨の中、駆け出す足音)


アリス「細かいことは気にしないんでしょ〜」

彩花 「それとこれとは話が別でしょうが⁉ ちょっと待たんかい!」


   (SE:彩花、アリスを追い掛けて走る足音)※フェードアウト



《続く》

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