Episode3 学食コミュニケーション



○大学・食堂(昼)

    一条彩花とアリス・バートンが向かい合って座っている。

    彩花、唐突に両肘を机に置き、目を細める。アリス、ジト目をする。

   (SE:食堂の喧騒)

   (SE:可能であれば机に肘を置く音)


彩花 「アリス」

アリス「あー、また今度ね。いただきまーす」


   (SE:アリスがラーメンを啜る音)

    彩花、口を開けて目を見開く。


アリス「そんな『何故?』みたいな顔をしても話は聞かないから。

    早くお昼ご飯食べよ?」

彩花 「ちょっとちょっとちょっと」

アリス「はいはい。ご飯食べよーね」

彩花 「違う! そうじゃない!」


    彩花、膨れっ面をしてアリスを見る。

    アリス、一瞥してスープを一口。

   (SE:レンゲがラーメンの器に当たる音)

   (SE:スープを飲む音)


アリス「あ、この塩ラーメン美味しい」

彩花 「ねぇー‼ お願い、話し聞いて⁉」

アリス「彩花は何頼んだの?」

彩花 「え? 私はカツカレーだけど……」

アリス「一口貰っても?」

彩花 「あ、全然いいよ」

アリス「ありがとう。私のも一口食べる?」

彩花 「食べる食べるー」


   (SE:器を交換して机に置く音)


彩花 「いただきまーす」


   (SE:彩花がラーメンを啜る音)


彩花 「え⁉ バチくそに旨いじゃん!」

アリス「でしょ〜」


    アリス、カレーを掬って食べる。

   (SE:スプーンが器に当たる音)


アリス「……あ、カレーも美味しい」

彩花 「ほんと! やった〜」

アリス「あ、まだ食べてないのか」


   (SE:カレーの器を彩花の前に置く音)


アリス「はい、ありがとう」

彩花 「うん! こっちも返すね〜」


   (SE:ラーメンの器をアリスの前に置く音)

   (SE:スプーンが器に当たる音)

    彩花もカレーを食べる。


彩花 「うわ! めちゃくちゃ旨いじゃん!」

    大学の学食ってこんなに美味しいんだね。

    これなら外に食べにいかなくていいじゃん」

アリス「来て良かったでしょ?」

彩花 「うん♪

    忙しい時はこっちで食べちゃうの、全然アリよりのアリだよ〜」


   (SE:アリスがラーメンを啜る音)

   (SE:スプーンが器に当たる音)

    しばらく無言で2人は食べる。

    チャイムが鳴り、アリスが箸を置く。

   (SE:学校のチャイム音)


アリス「あ。彩花、次の講義、大丈夫?」

彩花 「うん? うううーんうん」

アリス「……なんて?」

彩花 「うううーんうん!」

アリス「(溜息)はぁ。呑み込んでから話しなさいよ。行儀悪いわよ。

    日本でもそれはマナー違反でしょ?」


   彩花、ゴクリとカレーを呑み込む。


彩花 「午後は講義なーし。遊び放題!」

アリス「あ、そうなの?

    そしたらこの後、買い物いかない? 

    そろそろ夏服買っておきたくて」

彩花 「お、いいね〜。行こう行こう!」


   (SE:カレーを搔き込む感じでスプーンが器に当たる音)

   (SE:カレーを食べ終え、スプーンを机に置く音)

   (SE:水を飲む音)

   (SE:コップを机に置く音)


彩花 「げぷぅ」

アリス「サイテー」

彩花 「なんでさー。

    これがジャパン式食事のマナーなのに、知らないのー?」

アリス「……ちなみにそのマナーの意味は?」

彩花 「もちろん、お腹パンパンって意味です!」


    彩花が笑う。アリス、額に手を当てる。


アリス「やっぱり馬鹿だったか」

彩花 「誰が馬鹿じゃい!

    こっちとら最強に可愛い天才じゃい! 覚えとけ‼」

アリス「……やっぱり馬鹿だったか」

彩花 「あれ〜。おっかしいな〜。

    ちょくちょく話しが噛み合わないぞ〜。あれれ?」

アリス「あ、ごめんごめん。

    天才って書いて馬鹿って読むタイプか。日本語難しいね」

彩花 「ちょっとお姉さん⁉

    日本語ちょー理解してるじゃないですか⁉」


    彩花、腕を組んで熟考する。


彩花 「あれ? 何か忘れてるような……」


   (SE:アリスが立ち上がる音)

   (SE:トレーを持つ音)


アリス「さぁ、トレー片そう」

彩花 「あ、うん。オッケー」


   (SE:彩花が立ち上がろうとして椅子を動かす音)

    彩花、立ち上がろうとして声を上げる。


彩花 「あああああああああああああああ⁉」


   (SE:彩花が机にバンっと手を置く音)


彩花 「アタシの話を聞いてよぉ‼」

アリス「……ッチ。思い出したか」

彩花 「聞こえてんぞ、こんちくしょう‼」

アリス「忘れるくらいのことなんでしょ? もうよくない?」

彩花 「よくない! はい、座る!」


   (SE:アリスが座る音)

   (SE:彩花、椅子の位置を元に戻す音)

   (SE:可能であれば。再度机に肘を置く音)


彩花 「アリス、聞いて欲しい」

アリス「いや、結構です」

彩花 「だ・か・ら! 違う。そうじゃない‼」


   (SE:彩花が何度か机を叩く音)

    アリス、腕と足を組み、見下ろす。


アリス「はぁ……いいよ。はい、なに?」

彩花 「なんか、め〜〜っちゃ態度でかいんですけど……」

アリス「どうせ私の態度が大きくなってもおかしくないこと言うんでしょ?」

彩花 「ちっちっち。まだ分からないよー」

アリス「はいはい。で、なに?」


   彩花、真面目な顔をする。


彩花 「アリス、本当に聞いて欲しい」

アリス「はよ言え」

彩花 「理不尽過ぎんか⁉ まぁーいいや」


   (SE:彩花の椅子が軋む音)


彩花 「実は言わなくちゃいけないことがある」

アリス「課題やってほしいとか?

    それとも代筆? 嫌なんだけど」

彩花 「……借りてた服、なくしちゃった。てへ☆」

アリス「よし。そこに正座しろ。お仕置きだ」



《続く》

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