第2話 おちる

どしゃ!!

その音で目が覚める。都内のマンション4階建ての402号室に自分は住んでおり、決まって深夜3時半、この時間になるといつも鳴り響く音。これは大学4年を迎える少し前から、最初はたんなる気のせいかと思っていた。でもそれは決まって3時半にベランダの方で自分を起こすほどの音で鳴り響く。ベランダをでて確認してもそれらしき音、物は見当たらない。マンションに住んでる住人にも聞いたが、そんな音は聞いた事ないと言っていた。おかげで自分は寝不足続きで、大学の授業の歳中に寝てしまうことが多くなり、バイトでももっと怒られるようになった。引越しも考えたが周辺で探しても入居者がほぼ埋まっており、自分の大学にも近く、家賃もいい物件はそうそう見つからなかったため諦めた。もう少しの辛抱だ、後1年我慢すれば、、俺は離れられる。


どしゃ!!

また鳴った。もうなんなんだよぉ!こっちは残業が当たり前のバイトして家賃、生活費、授業費を稼いで、二浪してやっと入った大学で立派とした社会人に向けて勉強も頑張って、何もかも大変だってのになんでこんな音に悩まされなきゃいけないんだよ!心でそう思った。俺は下の人に迷惑をかけないよう静かに床を叩き、布団に潜った。「お前はもううちの子じゃない!」両親に見放された一言を思い出す。

どしゃ!!また鳴った。右手で片目を擦り、ベランダの方を見た。少しライトが照らしてるように明るくなっている夜、今日も朝から大学に行って、夕方は怒られる日々のバイトか、そう思いながらまた布団に潜った。「勉強ばっかのつまらない男」元カノ、友達に言われた一言を思い出す。


どしゃ!また鳴った。大学4年にして必須科目だった単位を落とした。また1年頑張らなきゃ、、俺は自然と起き上がり、ゆらゆらとベランダの方に歩き出した。ベランダの窓を開け、外に出ると、すぅーと風が心地よく自分にあたった。とても懐かしい感じがした。「おいで」男か女かもわからない声で俺の耳元でそれは聞こえた。「はぁ疲れた、、」俺はそう言いそっとベランダの柵に手をかけた。

そして、、、、、どしゃ!!

その音は鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヨルニキク ヒル @kiyojii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ