うっかり引きこもりサキュバス姉妹を拾っちゃった件

第2話 空から降ってきた宝箱

二宮拓也は目の前にいる二人の少女を見つめ、心の中に波のような動揺が広がっていた。こんなことが自分に起こるなんて、どうしても信じられない。普通の高校生活の中で、平凡さが少しも贅沢に思える彼が、まさかこんな奇遇に出会うとは思いもしなかった。天から降ってきた宝箱、そしてその中から現れた小説中サキュバスのような外見の姉妹。すべてが彼の日常で読んでいた小説のような場面であり、しかし今回はリアルに彼の目の前で起こっている。

拓也は静かに息を吸い、心を落ち着けようとするが、内心の疑問と不安はどうしても抑えきれない。彼はそこに立ち、二人の少女と無言のまま対峙している。夕陽の光が木々の隙間から彼らに降り注ぎ、静かでありながら奇妙な光景を作り出していた。

優奈は軽くドレスの埃を払った後、その澄んだ瞳で拓也を見つめた。「あなたが私たちの召喚者ですか？」彼女の声は低く、柔らかく、そして少しの不確かさを含んでいた。

拓也は一瞬呆然とし、すぐに頭を振った。「い、いえ……私はただ……」彼は言葉を組み立てようと努力するが、適切な表現が見つからない。

優奈の妹である優恩（ユエン）は、もっと無邪気な表情をしていた。彼女の瞳には好奇心が満ち、世界のすべてが新鮮に映っているようだった。彼女は優奈の袖を軽く引っ張り、小さな声で言った。「お姉ちゃん、この人は魔法を使うような人じゃなさそうだよ……」

優奈は眉をひそめ、しばらく考えた後、拓也に向かって質問した。「それなら、あなたは誰？ここはどこ？私たちはどうしてここにいるの？」

一連の質問に拓也は困惑していた。自分ですら状況を理解していないのに、どう答えればいいのか分からない。しかし、目の前の状況は彼に逃げ道を許さなかった。拓也は深呼吸し、できるだけ声を落ち着けて話そうとした。

「ここは福岡市です。私は二宮拓也です。」彼は簡単に自己紹介した。「あなたたちがどうしてここにいるかは……正直、私にもわからない。家に帰る途中でこの宝箱が突然落ちてきて、私を押しつぶしたんです。その後、あなたたちが現れました。」

拓也の言葉は簡潔だったが、優奈と優恩を思索に引き込むには十分だった。彼女たちはお互いに目を合わせ、無言のコミュニケーションを交わしているようだった。最終的に、優奈は微かに頷き、拓也の説明を受け入れた様子だった。

「いずれにせよ、まずはどこかに落ち着く場所を見つけなければなりませんね。」優奈はリーダーシップを感じさせる口調で言った。彼女は拓也に向かって振り返り、微笑んだ。「二宮拓也さん……私たちを一時的に泊めてくれませんか？」

このお願いに拓也は一瞬呆然とした。見知らぬ少女たちを家に招く？しかも彼女たちは来歴不明のサキュバスだ？それはあまりにも非現実的に思えた。しかし拓也の心の中には、これらの少女たちが行き場を失っているのなら、もし自分が断ったら困ってしまうのではないか、という奇妙な感覚が芽生えていた。もしかしたら、これは自分の人生を変えるチャンスかもしれないとも思った。

「本当に他に行くところがないのですか？」拓也は聞いたが、心の中ではすでに答えが見えていた。

優恩は軽く頭を振り、目には渇望と無力感が浮かんでいた。「私たちは…あなたしか知らないんです……」

この言葉を聞いた拓也の心は痛んだ。依存される感覚は彼にとって未知だったが、無視することもできなかった。彼はしばらく黙った後、最終的に頷いた。

「わかりました……一時的にでも私の家に泊まってもいいですが、」拓也は言った。心の中にはまだ不安が残っていた。「ただし、一つ条件があります——問題を起こさないでください。」

優奈は微笑みながら「私たちはおとなしくします。ありがとう、二宮拓也さん。」と言った。

優恩は嬉しそうに跳ね上がり、春の日差しのような明るい笑顔で「ありがとう！拓也お兄ちゃん！」と言った。

「お兄ちゃん」という言葉に拓也は心の中の何かが触れられたように感じた。思わず苦笑し、日常が簡単には平穏無事ではないと心の中で思った。

帰り道、三人は並んで歩いた。夕陽の残光が彼らの影を長く引き延ばし、拓也は自分が異世界小説の中にいるように感じたが、今回はページをめくることができなかった。

優奈と優恩は彼の横で話し続け、優恩は時折鈴のような笑い声を上げ、雰囲気を明るくしていた。拓也は彼女たちの会話を聞きながら、大部分はこの世界についての基本的な質問だったが、彼女たちの内面には、彼が知ることのできない秘密が隠されているように感じた。

拓也は心の中で、この二人の少女の登場が簡単ではないことを確信していた。しかし、今はできることを一歩ずつ進めるしかないと思った。

「拓也さん、住んでいる場所は広いですか？」優恩が突然問いかけ、拓也の思考を中断させた。

うーん……そんなに広くはないけど、拓也は答えた。「ただの普通の古い家だけど、スペースはたぶん足りると思うよ。」

古い家？優奈はその言葉を繰り返し、興味深そうに目を輝かせた。「それなら、この古い家にも少しは活気が出るかもしれませんね。」

拓也は笑いながら、「そうかもね。」と言った。

この会話で拓也の心の緊張が少し和らいだ。彼はこの二人の少女たちと共に過ごす生活が、思っていたほど悪くないかもしれないと感じ始めた。