うっかり引きこもりサキュバス姉妹を拾っちゃった件

@shikawei0824

第1話 存在感が薄い地味な男子

福岡の平凡な田舎で、二宮(にのみや)拓也(たくや)は目立たない高校生活を送っていた。もうすぐ18歳になる高校2年生で、存在感がまるで教室の椅子のように無視され、誰にも気にされることはなかった。身長は170センチで、普通の高校では目立つこともない。学校の事務に対して興味を持たず、いつもぼさぼさの前髪をしているため、寝不足のように見える。実際、彼はよく夜更かしするが、それは学校の課題やクラブ活動ではなく、読書のためだ——恋愛小説を読むことが唯一の興味だった。


拓也の両親は長年海外で働いており、福岡の古い家に一人で住んでいる。この生活は他人から見ると孤独に思えるかもしれないが、拓也にとってはすでに日常だった。現実世界に対してあまり期待せず、現実で奮闘するよりも、虚構の物語に慰めを求めることを選んでいた。小説の世界は彼にとって避難所であり、唯一心臓が高鳴る場所だった。


毎朝、拓也は静かに家を出て、同じルートで学校に向かう。途中に小さな公園があり、その後に無人の雑貨店がいくつか並び、静かな住宅街を通り抜けて学校の門に入る。この道は彼にとって生活の一部のようで、すべてが予測可能で、驚きも変化もない。電器街や商店街とは無縁の生活を送っていた。


学校では、拓也は常に周囲から見られない存在だった。授業中、彼は教室の隅に座り、他の生徒との交流を避けていた。人混みが嫌いなわけではなく、自分には特に話すべきことがないと感じていたからだ。クラスの中で彼は特に賢くもなく、体育が得意でもなく、目立つ特技もなかった。クラスメートとの交流は、必要最低限の挨拶と礼儀だけであり、授業が終わるとすぐに本を取り出し、ページに全神経を集中させていた。現実の悩みを逃れるために、小説の中に没頭していた。


彼が読む小説は、恋愛やファンタジー、冒険の物語が多く、現実とは全く異なる世界観とキャラクターが描かれていた。その中で、彼は主人公となり、英雄として冒険をすることができる。現実では体験できない冒険を追体験し、キャラクターの勇気と決意を好んでいた。物語が終わるたびに、現実に戻ると強い喪失感を感じていた。


そんな日常の中で、時間はゆっくりと静かに流れていく。拓也には特に大きな夢もなく、どうしてもやらなければならないこともなかった。現実の生活は彼にとって、平凡な本のようで、ページをめくるだけで、クライマックスも転換点もない。


しかし、そんな平凡な日々の中で、拓也の生活は前例のない変化を迎えることになる。


その日、放課後の福岡の街はいつも通り静かで、空は淡いオレンジ色に染まり、夕陽の余韻が街に温かみを加えていた。拓也はいつものように、ぼんやりと帰宅の道を歩いていた。耳に入るのは時折通り過ぎる車の音と、風に揺れる葉のささやきだけで、すべてが穏やかだった。今日も彼は頭を下げて、手に持った小説に集中し、虚構の物語に完全に没入していた。


その時、突然、重い物体が空から降ってきて、拓也の頭の上に落ちてきた。反応する暇もなく、痛みを感じると同時に、その巨大的な物体に押し潰された。視界が暗くなり、強烈な痛みが思考を断ち切り、小説も手から滑り落ちた。拓也は体を動かそうとしたが、その重さで全く動けなかった。


彼は何が自分を押さえつけているのかを見ようとしたが、視界に入るのは巨大な宝箱だけだった。古風で神秘的な外観を持ち、表面には奇妙な符号が刻まれており、それらの符号が淡い紫色の光を放っていた。その光が時間と共に強まるにつれ、拓也はますます視界がぼやけ、意識が朦朧としてきた。


意識を失いかけたその瞬間、宝箱が「カチリ」と音を立てて、自動的に開いた。拓也は驚きながら箱の内部を見ると、大量の紫色の符号が漂い、空中で複雑なパターンを織り成していた。パターンが完成するにつれて、箱の中の光が強くなり、街全体を照らした。


次に、2人の少女が突然箱から落ち、拓也のそばに重く落ちてきた。

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